コラム

2021.06.22

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遺言書

相続法改正③ ~自筆証書遺言の方式緩和と 保管制度の新設~(弁護士:中澤亮一)

<過去の連載記事はこちら>
・相続法改正①~配偶者短期居住権~

・相続法改正② ~特別寄与料~

はじめに

相続法改正連載の最終回です。

今回は自筆証書遺言に関する改正内容について、一部をご紹介いたします。

 

遺産に関する争いごとを防止するために、当事務所では遺言を作成しておくことをお勧めしておりますが、遺言にも種類があり、そのうちの一つが自筆証書遺言です。

今回の民法改正によって、この自筆証書遺言が使いやすくなりました。

 

自筆証書遺言の方式緩和

遺言には、大きく分けて普通方式遺言と特別方式遺言があるのですが、一般的に行われているのは普通方式遺言です。

そして普通方式遺言には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の三種類があります。


今回ご説明する自筆証書遺言は、その名の通り遺言者が自筆で遺言書を作る方式です。

普通方式遺言の中では一番手軽で費用もかからない方法ですが、一方で、遺言者が遺言書のすべてを自分で書かなければならないという制限があり、パソコンによる作成や代筆も許されなかったため、とくに財産目録を自筆で作成することに困難が伴い、利用しづらい面がありました。


そこで今回の法改正では、自筆証書遺言の「相続財産の特定に必要な事項」、つまり財産目録については、パソコンによる作成や代筆のほか、不動産の全部事項証明書や預貯金通帳の写しの添付でも足りることになりました(民法968条2項)。

ただし、自署を要しないのは財産目録に限られ、それ以外の部分はなお自筆で作成する必要があること、自筆でない部分はすべての用紙に署名捺印が必要であることは、注意が必要です。

 

自筆証書遺言に係る遺言書の保管制度の新設

自筆証書遺言は自分で作成できる点で手軽である反面、遺言者自身が紛失してしまったり、作成された遺言書の保管場所が分からなくなったりというリスクもありました。


そこで、遺言書保管法という法律が作られ、自筆証書遺言を法務局が保管する制度が新たに作られました。

保管の申請は、遺言者が遺言書保管所に自ら出頭し、法務省令で定める様式に沿って作成された無封の遺言書である必要がありますが、せっかく作った遺言を紛失するというリスクは避けられます。


また、遺言書保管法により保管所に保管されている遺言書は、検認手続(民法1004条1項)が不要になります(遺言書保管法11)。

検認とは、遺言者の死後に、遺言書の保管者又はこれを発見した相続人が裁判所に申立てを行って、その状態等を確認する手続です。

この手続も正直なところ面倒なものであり、これが不要になる点も大きいといえます。

 

どの方式がよいか

このように、自筆証書遺言も使いやすくはなりました。

しかし、自筆証書遺言は自分で作るものである以上不備があることが多く、かえって紛争の種になってしまう場合もあります。

遺言をお考えの際は、費用と手間をかけてでも、公正証書遺言の方式で作成されることをお勧めします。


遺言に関しては、お気軽に当事務所までご相談ください。


<参考文献:片岡武、管野眞一「改正相続法と家庭裁判所の実務」日本加除出版株式会社>

 

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<初出:顧問先向け情報紙「コモンズ通心」2021年4月5日号(vol.255)>

※掲載時の法令に基づいており、現在の法律やその後の裁判例などで解釈が異なる可能性があります。

この記事を執筆した弁護士

弁護士 中澤 亮一

中澤 亮一
(なかざわ りょういち)

一新総合法律事務所 
理事/上越事務所長/弁護士

出身地:新潟県南魚沼郡湯沢町 
出身大学:早稲田大学法科大学院修了
国立大学法人における研究倫理委員会委員、新潟県弁護士会学校へ行こう委員会副委員長などを務めている。
主な取扱分野は、相続全般(遺言書作成、遺産分割、相続放棄、遺留分請求など)。そのほか離婚、企業法務等幅広い分野に精通しています。
相続・生前対策セミナーをはじめ、ハラスメント研修などの講師実績があります。

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