相続放棄をしたら、老朽化した空家の問題は関係なくなる?
被相続人の借金を相続したくないとか、遺産管理が大変だからなど様々な理由で、相続人が相続放棄することがありますが、被相続人に家があった場合はどうなるでしょうか。
とくに老朽化した家が空家となると近隣に迷惑がかかるような場合が考えられますが、相続放棄したのだから自分には関係ないといえるでしょうか。
この点、法律は、相続人が相続放棄をしても相続財産の管理から解放されるのではなく、「その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。」(民法940条1項)と定められています。
そうしますと、空家が崩れて隣家に倒れ掛かるなどして被害を及ぼした場合に、相続人が相続放棄をしても管理義務に反していれば、その修理等の措置や損害賠償請求に応じなければならないことになりかねません。
これでは、そのような管理等が無理だから相続放棄をしたはずなのに意味がないのではないかと思えます。
空家の管理ができない場合は…
そこで、そのような対応も含めて相続財産の管理処分等を行ってもらうために、家庭裁判所に相続財産管理人を選任してもらうよう申立(民法952条1項)をすることが考えられます。
もっとも、相続財産管理人の申立にも費用がある程度かかりますし、また相続人自身に経済力が乏しいなど実際には管理等で責任を負えないことがあると思われます。
その対処として、たとえば、倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態であるなど、特定空家等に該当する場合には「空家等対策の推進に関する特別措置法」による対応も考えられるでしょうし、その程度に至らなくとも行政上の対応があるかもしれませんので、その不動産所在地の自治体に相談してはどうかと思います。
なお、相続財産管理人が選任された場合において、処理がされなかった不動産について最終的に国庫に帰属(民法959条)されることで国において管理されることが考えられますが、国庫帰属はそう容易に認められないのが実情のようです。
所有者が不明な不動産の問題等に関して法整備が進められているところですが、以上のような問題にも整備や対応してもらえないかなと思うところです。
* 記事の内容については、2021年3月執筆時の法令または情報に基づく
* 当事務所は、本サイト上で提供している情報に関していかなる保証