【事案の概要】
Aさんは、60代の男性です。
Aさんは、息子とは数十年間もの長期間にわたって音信不通でした。
ある日、息子が暮らしていたというアパートの大家さんから連絡があり、息子が亡くなったこと、そして賃料の滞納分があるので支払って欲しいということを告げられました。
Aさんは、息子がどのような生活をしていたのか、また家族がいたのかどうかということについて、全く知らない状況でした。
Aさんは、どのように対応すればよいかわからず、当事務所に相談にいらっしゃいました。
弁護士は、まずAさんに対し、もしも息子に子供(Aさんの孫)がいなければ、Aさんが法定相続人として息子の債務を相続する立場になることを説明しました。
そして、Aさんが法定相続人になるかどうかを調査するために戸籍謄本を取り寄せるべきであること、さらに、債務の相続を望まない場合は相続放棄という手続によって相続人とならずに済むことを説明しました。
その後、弁護士がAさんから相続関係調査の依頼を受け、戸籍謄本を取り寄せたところ、Aさんの息子には子供がおらず、かつ独身であったため、父親であるAさんが法定相続人となってしまうことが分かりました(なお、Aさんの妻は先に他界していました)。
また、弁護士は念のために、前記の大家さんから賃料の滞納を示す資料を提供してもらって、滞納の事実が間違いないことを確認しました。
Aさんの意向としては、滞納があったことを考慮すれば、息子にはほとんど財産がなかっただろうと思われるので、相続放棄をして財産も債務も受け継がないようにしたい、という意向でした。
そこで、弁護士はAさんから相続放棄手続の依頼を受け、手続に必要な書類を取り揃えて、家庭裁判所に対して相続放棄の手続を行いました。
その結果、Aさんは、息子の債務を相続せずに済みました。
【弁護士の解説】
亡くなった方が親族と疎遠であった場合、親族としては、自分が法定相続人となるのかどうか、遺産はあるのか、負債はあるのかなどを分からないことも多いです。
法定相続人は、相続放棄という手続を行えば、相続人でなくなることができます。
相続放棄を行えば、亡くなった方に財産があってもそれを相続できない代わりに、債務を相続することもありません。
なお、相続放棄は、相続開始を知ったときから3ヶ月以内に裁判所への届け出(この届け出のことを「申述」といいます。)を行う必要があり、その期間制限を超えてしまうと相続放棄をすることができません。
弁護士に依頼していただければ、亡くなった方の親族関係を調査して、誰が法定相続人に該当するのかを調べることができます。
また、財産と債務の有無についても相当程度の調査を行うことができます。
調査の結果、相続放棄をした方が良いという場合、この事例のように弁護士が家庭裁判所への申述手続を代理することができます。
相続放棄の申述手続はご本人で行うことも可能ですが、亡くなった方の戸籍謄本を取り寄せるなど、裁判所に提出する様々な資料を収集する必要がありますので、その負担を軽くするためには弁護士を代理人とすることをお勧めします。
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