【事案の概要】
Aさんは60代の男性です。
このたび、自宅で同居していた父が亡くなりました。
Aさんには同じ60代の兄のBさんと妹のCさんがおり、母はすでに亡くなっていました。
Aさんと父は新潟県内の自宅に住んでおり、兄と妹は県外に住んでいました。
父の遺産としては、自宅の土地建物、預金、株式などがあり、遺言は遺していないようでした。
Aさんの父は、生前、東京にマンションを所有しており、そのマンションをBさんに無償で譲り渡していました。
また父は、Cさんの結婚の際に、支度金として300万円の現金を渡していました。
Aさんは、Bさん、Cさんとはこれまであまり連絡をとっていませんでしたが、父が亡くなったことで遺産分割の話をしなければならないと思い、電話で連絡をとってみました。
しかし、分割の内容について話合いがまとまらず、Aさんがマンションや支度金について指摘しても、相続とは関係ないの一点張りでした。
そこでAさんは、当事務所の弁護士に相談し、相続について弁護士に委任することにしました。
弁護士は、Aさんの代理人としてBさん、Cさんと交渉を行い、マンションや現金の生前贈与は特別受益にあたることなどを主張しました。
その結果、過去の生前贈与分が考慮されて、死亡当時の遺産についてはAさんに多めに分配されるという、Aさんに納得のいく内容で合意することができました。
【弁護士の解説】
遺産の相続につきまして、今回のケースのように、相続人のうちの一人または何人かが、被相続人(亡くなった方)から財産の贈与などで利益を受けていたという場合があります。
このような場合、死亡当時の遺産を相続人が単に法定相続分に基づいて分けると、相続人の間で実質的に不公平が生じてしまいます。
そこで、相続人が被相続人から生前に利益を受けた理由次第では、その利益の分が考慮された上で、相続における各相続人の取り分が計算されます。
この、生前贈与などによって受けた利益のことを、「特別受益」といい、特別受益分を考慮したうえで具体的な相続分を算定することを「特別受益の持ち戻し」といいます。
この事例では、BさんやCさんが父から受けた援助は特別受益に該当するものでしたので、Aさんから依頼を受けた弁護士が、特別受益のことをBさんとCさんに主張することで、適切な解決に導くことができました。
ただし、親族からの援助は、その全てが直ちに特別受益と認められるわけではありません。
また、特別受益額の評価や、特別受益を考慮した相続分の計算は複雑になることが多々あります。
特別受益に関する悩みをお持ちの方は当事務所の弁護士までご相談ください。
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・父の遺産を巡り、他のきょうだいから、過去に父から受けた援助を考慮して遺産を分割するべきだと主張された。
・親の生前、自分のお金や時間を親の介護のためにたくさん使った。その分をほかの相続人に主張したい