コラム

2024.10.01

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基礎知識遺産分割

遺産相続で揉める人と揉めない人の差はどこ?トラブルの原因と対策

遺産相続で揉めたくないと思っていても、いざ相続が発生すると揉める家庭も少なくありません。揉める人と揉めない人の違いは何でしょうか?


遺産相続は多くの家庭で避けて通れない問題であり、想像以上にトラブルが多く、トラブルになった場合には親しい家族間であるからこそ深刻な対立を引き起こす可能性があります。


本記事では、相続で揉めやすい家族の特徴と揉めることになる原因について紹介するとともに、相続トラブルを防ぐための対策を相続チームの弁護士が詳しく解説します。

適切な対策を講じることで、相続トラブルのない遺産相続を実現しましょう。

このコラムでわかること/
・遺産相続で揉めるケースによくある原因
・遺産相続で揉めないための原因ごとの対策

この記事を監修した弁護士

弁護士 中川 正一

中川 正一
(なかがわ まさかず)

一新総合法律事務所 
理事/新発田事務所長/弁護士

出身地:新潟県新潟市
出身大学:電気通信大学大学院情報工学専攻(中退)
新潟県弁護士会副会長(平成26年度)、現在は新発田市情報公開・個人情報保護審査会委員、新発田市行政不服審査委員などを歴任しています。

取扱分野は、相続・離婚・交通事故など。その他、借金問題や、建築・不動産、労働問題など幅広い分野に精通しています。
特に相続・成年後見・家族信託等をテーマとしたセミナー講師を務めた実績が多数あります。

1.相続トラブルは意外と身近な問題!

遺産が多くあるわけではないから、相続トラブルは起こらないと思っていませんか?
令和4年の司法統計(*) によれば、相続人同士での話し合いでは遺産分割協議がまとまらずに、家庭裁判所の判断によって決めた件数(遺産分割審判および調停案件の総数)は6,857件です。

そして、その内の76%が遺産総額5,000万円以下の遺産について争っています。

■遺産分割審判及び調停案件における遺産額の割合
1,000万円以下…約33%
1,000万円超~5,000万円以下…43%


(*) 令和4年 司法統計年報(家事編)第52表
https://www.courts.go.jp/app/files/toukei/659/012659.pdf

遺産相続で揉めているのは富裕層だけではなく、そこそこ財産のある家庭に紛争が多いと言えます。

また、家庭裁判所に持ち込むと最終決定が下るまでの審理期間に1~2年かかることもあります。


仲の良い家族・兄弟姉妹が相続のせいで仲たがいするような相続トラブルを回避するためには、財産の多い少ないにかかわらず、事前の対策をすることが重要になってきます。

2.相続で揉める7つの原因

次に相続トラブルの発生しやすい原因についてパターンごとに解説いたします。

具体的には、遺産に不動産が含まれることや、相続人の仲が悪い、遺言書がないといった些細なことと思われる要素が相続トラブルの引き金となります。

また、特定の相続人への贈与や、生前に介護をしていたなどの負担から不公平に感じられる場合も原因となることがあります。

では、それぞれのケースについてトラブルの原因を詳しく確認していきたいと思います。

①遺産に不動産がある

遺産に不動産が含まれている場合、相続時にトラブルが増える傾向があります。

不動産は現金のように簡単に公平には分けられないため、誰が不動産を取得するのか、または売却して現金化し分割するのかなど分割方法が難しいためです。

また、不動産の評価方法や売却のタイミングによって価値が変動するのもトラブルの原因と言えます。


価値のないいわゆる「負動産」の場合には、管理維持の手間や費用が発生し、誰も相続したがらず、相続人間で押し付けあうことになる場合もあります。


また、相続財産である不動産(家・土地)に現在も住んでいる人がいる場合、例えば父親が亡くなり、長男が実家に住んでいるケースや二世帯住宅であったときには、当然ながらそのまま住み続けたいと希望することは多いと思いますが、次男が実家の価値分の現金分割を求めた場合に、不動産の価値評価や売却を巡って意見が食い違うことになってしまいます。

②遺言書がない、遺言書の内容が不公平

遺言書が存在しない場合、相続人がそれぞれ自分の取り分を主張することになるため、お互いの意見の相違や、自分の相続分に対する期待とのズレが生じやすく、争いが発生する可能性が高まります。

また、遺言書があった場合でも、遺言書の内容が「特定の相続人にすべての遺産を相続させる」、「愛人に遺産を譲る」、などといった法定相続分(法律で決められている遺産相続割合)とは異なるような不公平な内容の遺言書であった場合には、他の相続人から納得を得られにくいでしょう。


あまりに不公平な内容の遺言が残されていた場合には、たとえ法的に有効な遺言書であったとしても、納得のいかない相続人から「遺留分侵害請求」などの法的手段を取られることも考えられ、問題が長期化します。

③知らない相続人がいた、相続人の仲が悪い

被相続人(亡くなった方)の死後になって知らされる親族の存在があった場合、例えば父親の前妻の子(いわゆる異母きょうだい)や、認知された隠し子などが急に相続人として現れると、既存の相続人はその存在自体に驚き、不信感や不公平感を抱くことになるでしょう。

前妻の子や、認知された子どもには当然に相続する権利がありますので「遺産を渡したくない!」といくら思っても法に従って公平に遺産分配を行わなければなりません。


あるいは、相続人同士の関係が悪いと感情的な対立が起きやすく、スムーズな遺産分割が難しくなります。

被相続人が生前に特定の相続人だけを特別扱いしていた場合や、逆に被相続人に対して虐待や暴力を振るっていた場合なども相続人の仲たがいの原因となります。


また、法定相続人ではない親族や相続人の配偶者などが相続に対して意見をすることで、遺産分割協議が思うように進まなくなってしまうことも少なくありません。

④特定相続人への生前贈与があった

被相続人の生前に、特定相続人だけが多額の贈与を受けていた場合、他の相続人は不公平感を感じます。

例えば、子どもの内の一人が家を購入する際に親から多額の金銭援助を受けていた、一人だけが個人事業の開業資金を援助してもらっていたなどの場合です。


このような贈与を「特別受益」といいます。

特別受益があった場合には、遺産を公平に分けようとしても、特別受益を受けていなかったほかのきょうだいは納得できずに遺産分割時に揉める可能性があります。

また贈与を受けた側が受け取っていた事実を認めずに揉めるケースもあります。

⑤特定の相続人に介護など負担があった

特定の相続人だけが被相続人の介護負担が大きかった場合、今までの負担感から他の相続人よりも遺産を多く相続したいと考えることがあるでしょう。

その相続人に対して、何の配慮もせずに遺産分割協議を行ってしまうことで、相続トラブルに発展することがあります。


特定の相続人が病気の親の介護や、家業の発展・財産維持に貢献するなどして、他の相続人よりも大きな労力や努力をしていた場合に、その貢献を正当に評価して相続財産の配分に反映させる「寄与分」というものがあります。

相続において公平性を保つためには、こうした寄与分を適切に評価することが重要です。


しかし、どの程度の貢献をすれば寄与分と認められるのか、認められた場合にもその寄与分がお金に換算するとどの程度の評価になるのかの判断がとても難しく、そのため当事者同士では話し合いが難航する可能性があります。

【関連コラム】
寄与分とは?親の介護などが寄与分と認められるために必要な要件

⑥特定の相続人が財産管理をしている

特定の相続人(例えば親と同居している長男など)が財産管理を行っている場合、他の相続人との間でトラブルが発生することがあります。

原因として、財産管理を担当している相続人が他の相続人に対し預貯金などの財産情報を十分に共有しないことや、財産の使途に不明な点がある場合に「勝手に遺産を使い込んでいるのでは?」という疑念が生じるためです。

例えば、親の介護を行っていた子供が生活費や介護費用、施設代などとして親の財産を使用していた場合に、その使途が不透明であると他の相続人から疑念が抱かれやすくなります。


このようなトラブルを避けるためには、財産管理についてきちんと記録し、定期的に財産目録を作成するなど、生前から他の相続人にも情報共有し信頼関係を築くことが求められます。

【関連コラム】
相続財産(遺産)の使い込みがあった?よくあるケースと対処方法 

⑦負の遺産がある

被相続人が多額の借金を残していた場合、その借金を相続するかどうかで相続人が揉めることがあります。

相続財産は、プラスの財産だけでなく、借金やローンなどのマイナスの財産も対象になるからです。

連帯保証人になっていた場合には、その責任も相続しなければならないため、これが大きな問題となります。


負の遺産がある場合には、まず相続人全員が財産や負債の状況を正確に把握し、負債を分担する際の公平性を確保することが重要です。

次に、相続財産全体で考えてみたときに負の遺産が多い場合は、「相続放棄」「限定承認」といった法的手段を検討することも有効です。

3.相続で揉めないための対策とは

相続トラブルのない円満な相続を望む場合には、生前から事前の対策を講じることが重要です。

相続で揉める原因はそれぞれ違いますが、原因ごとに対処法を知ることで、あなたの望む円満な相続を実現することができます。

①早期の話し合いと事前のコミュニケーション

相続人間での相続トラブルを避けるためには、家族全員が元気なうちに、相続についての話し合いと事前のコミュニケーションを行うことが不可欠です。

自分も家族も全員健在で、遺産を相続する時期がまだ遠いと感じるかもしれませんが、不慮の事故や認知症など、話し合いたいときにはもう手遅れということも少なくありません。

全員が元気なうちに事前に話し合いの機会をもつことで、お互いの相続に関する意向や希望を明確にし、後々の誤解やトラブルを防ぐことができます。


例えば、親がまだ元気なうちに自宅や資産の分け方について子供たちと話し合うことで、親の亡くなった後で仲の良かった兄弟姉妹が遺産相続で揉める事態を防ぐことができます。

感情的な問題や価値観の違いがある家庭も多いですが、そういった場合はなお一層、事前に時間をかけてコミュニケーションを重ねることが大切になるでしょう。

②トラブルを防ぐ遺言書の役割

明確な遺言書の作成は、相続トラブルを避けるために非常に有効です。

遺言書の内容が不明確であった場合には、相続人間で解釈が異なり、遺産分割について揉める可能性が高くなりますので、誰が何を相続するのか、なぜそうなったのか、残された家族が納得できる内容になるよう準備しましょう。


例えば、「長男には土地を、長女には現金を」と遺言に記載されていた場合に、「土地」と「現金」が何を指しているのかはっきりとわからないため問題になる可能性があります。

遺言書には「新潟県新潟市○○の土地(地番:XXXX)を長男、○○銀行の口座にある現金X万円を長女に」というように具体的に記載するのが望ましいです。


さらに、負債がある場合には、負債の扱いについても明確に記載しておきましょう。

保証人に対する債務をどのように分配するかを具体的に記載するなど専門家のアドバイスを受けながら対策を講じることで、後々の紛争を回避できます。

◆遺言書は“公正証書遺言”にしましょう◆

遺言書は自筆証書遺言といって自分で作成することもできますが、トラブルを避けたいと思うのであれば弁護士などの専門家に相談し公正証書遺言の形で残しておくとさらに安心です。

公正証書遺言は、遺言書の内容について専門家の関与のもとで作成され、作成後は公証役場で保管されるため遺言書の紛失、変造、隠蔽の恐れがありませんので、自分の死後に遺言書の内容が無効とされるリスクを減らすことができます。

相続人にも事前に遺言書の存在を伝え、その内容について理解していると、相続手続きがよりスムーズに進行しやすくなります。


特に、特定の相続人に負担や贈与が行われた場合など、複雑な要因が絡む場合は弁護士などの専門家に相談しながら遺言書を作成する必要性が高まります。


特定相続人へ多額の生前贈与があった場合にはその贈与額を相続財産に含めて計算し、他の相続人は公正な相続分を主張することができます。

この計算方法を「特別受益の持ち戻し」といいます。

例えば、贈与によって一人の相続人が1,000万円を受け取った場合、この1,000万円を全体の相続財産に加えて再分配することになります。

この持ち戻しを望まない場合は、遺言において「持ち戻しの免除」を記載することもできますし、持ち戻しがあることを前提に配分を考えるのであれば、やはり遺言で相続分を明記することが望ましいでしょう。


中には、生前贈与を行った場合には、贈与の詳細(いつ、誰に、いくら贈与した)について記録しておけば良いと考える人もいますが、その記録の信憑性が新たな紛争になるリスクもありますので、生前に遺言を作成されることが最も端的な解決方法です。

なお、遺言を作成される場合は、信用性の高い公正証書遺言の方式を採りましょう。


また、特定の相続人だけが介護の負担や、家業の維持に貢献していた場合の「寄与分」については、その貢献に対して適切な評価が行われることを期待するものです。

また、この寄与分も考慮した遺言を作成しておくことが最も端的な解決方法です。

相続におけるこれらの問題は、法的な判断や手続が必要になりますので、弁護士に相談することをおすすめします。


世話をしてくれたなど個人的な思いがあり、特定の相続人の相続割合を多くしたり、法定相続人以外(例えば同居していた長男の嫁など)にも遺産を残したいなどの場合には、公正証書遺言で「どうしてこのような遺言書の内容にしたのか」についての自分の想いを、付記事項として記載すると他の相続人から理解を得やすくなるでしょう。

【関連コラム】
遺言書で全財産を一人に相続させることはできる?
 

③相続人調査と相続財産調査の徹底

相続が発生した場合には、相続人調査と相続財産調査を徹底しましょう。

亡くなった方に隠し子がいた場合や、疎遠となり長期間連絡が取れていない親族がいるケースでは、相続人調査を行わないと後になって突然新たな相続人が現れ、遺産分割が複雑化してしまうことが考えられます。

また、相続財産調査が不十分だと、遺産分割協議後に相続財産が判明し、再度遺産分割の手続きを行う必要が生じることもあります。


相続財産調査をきっちり行うことで、不動産や骨とう品についても適切な評価額が判明しますので、相続財産に不動産が含まれる場合であっても、その分配方法や代替手段について揉めることなく話し合いを進めやすくなります。

【関連コラム】
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④家族信託や成年後見制度の利用も検討

家族信託や成年後見制度を利用することで、財産管理や相続に関する意思決定を第三者が中立な立場で行うことができます。

例えば、家族信託を利用すると、認知症になった場合でも遺産が適切に管理されますので、特定の相続人による遺産の使い込みを防止します。

さらに、成年後見制度を導入すれば、精神的な判断能力が低下した際も財産の確保や遺産分割のトラブルを避けることができます。

家族信託や成年後見制度についても、弁護士が取り扱っておりますのでお気軽にご相談ください。

4.生前の相続対策でお悩みの場合は弁護士へ

遺産相続に関する法律は非常に複雑であり、自分が思いもよらないようなことから相続トラブルに発展することがあります。
また、相続問題は感情的になりがちで、家族間・親族間の争いも避けられない状況も多いです。


弁護士は相続に関する豊富な知識と経験を持っていますので、各個人のケースに応じた適切な助言を提供できます。

さらに、第三者である弁護士が客観的な立場で問題を取り扱うことで、冷静で公正な解決策を見出し、相続手続きの負担を精神的な面でも軽減するメリットがあります。

遺産分割の方法が公平でないと感じる場合や、遺言書の有効性に疑問を感じる場合には、話し合いがこじれる前に早めに弁護士にご相談ください。


弁護士に依頼することにより、相続人全員が合意した内容になるよう遺産分割協議をまとめ、遺産分割協議書を作成することで、後になって揉めるという事態も防ぐことができます。

また、相続財産に負債がある場合や、連絡の取れない相続人の調査も弁護士が相続人調査を行います。


トラブルのない遺産相続を実現するためにも、一新総合法律事務所の相続チーム弁護士へお気軽にご相談ください。

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