コラム

2024.03.11

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基礎知識

相続財産調査はなぜ必要?調べ方と対象となる財産について

相続が発生し、遺産分割を進めようと思ったときに、最初にやらなければならないことは、故人(被相続人)が保有していた財産を調査し、相続財産のすべてを明らかにすることです。

これを「相続財産調査」といいます。

相続財産調査は、遺産分割を公平に行うために必要かつ重要な情報となります。


しかし、被相続人と親子関係であったとしても、親の財産をどうやって調べたらよいのでしょうか?

相続財産調査について、その目的、調査対象となる財産の種類、調査方法、注意点などについて解説します。

1.相続財産をなぜ調査する必要があるのか

相続財産調査の主な目的は以下の4つになります。

相続財産の全体像の把握

遺産分割協議を行うためには、相続財産の内容と範囲を正確に知る必要があります。

調査で得られた情報は、相続人が財産を引き継ぐための書類準備や、遺言の内容を確認する際に必要な情報となります。

相続放棄の機会確保

相続放棄は、原則として、相続の発生を知ったときから3ヵ月以内に家庭裁判所へ相続放棄手続きする必要があります。

すべての相続財産を明らかにすることで、相続財産に債務があった場合に、相続放棄を検討する機会を確保することができます。

③遺産分割の公平性

相続人全員が納得できる遺産分割を実現するためには、相続財産の価値をきちんと評価することが重要です。

あとから公平性について相続人間でもめる事態を未然に防ぎます。

税務申告の必要性と金額の把握

相続税の申告に際して、相続財産の正確な評価額を算出する必要があります。

相続税の申告を、期限内に行う必要があるのか、ある場合は金額がいくらになるのかを判断する基準となる情報となります。


相続財産の情報を把握することで、遺産相続についての方向性をしっかりと決めることができます。

相続人間での遺産分割協議を円滑に進め、財産に債務があった場合には相続放棄の検討、そして正しい相続税申告を行うことができるのです。

2.対象となる相続財産について

相続財産調査をする際に必要な書類

相続財産調査を始めるにあたり、まずは自宅や勤務先などで、被相続人の保有財産についてわかる資料がないか確認します。

次に、手がかりとなる資料をもとに、銀行など各機関に財産について問い合わせを行います。

問い合わせをする際には、次の様な書類の提出が求められます。

 ①被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、除籍謄本
 ②被相続人の住民票の除票
 ③相続人の戸籍謄本
 ④相続人の印鑑証明書
 ⑤相続人の身分証明書(マイナンバーカード、免許証、年金手帳など)

被相続人の戸籍等は一般的には複数あることがほとんどで、戸籍謄本の取り寄せ作業は大変手間がかかります。

管轄する法務局で「法定相続情報一覧図」の保管・交付の申請手続きを行い、法定相続情報一覧図を取得するのがよいでしょう。

相続財産調査の対象となるもの

相続財産調査の対象となるのは、以下のようなものが挙げられます。

  • 不動産:住宅、土地、ビルなどの所有権
  • 預貯金:銀行口座の預金、郵便貯金など
  • 有価証券:株式、債券、投資信託など
  • 自動車や宝飾品などの動産
  • 著作権や特許権などの知的財産権
  • 負債:借金、ローンなどの借り入れ状況

これらの財産の確認と評価は、相続財産調査の主な作業となります。

厳密には相続財産ではないですが、生命保険金や退職金手当などについても早めに確認しておくとよいでしょう。

調査方法について

相続財産調査の進め方について簡単に説明します。

公的記録の照会

被相続人の残した郵便物や資料、関係者等から情報を収集し、財産の照会をします。

不動産登記簿、預金口座の情報、有価証券の登録など、公的な記録を照会して財産の存在を確認します。


そもそもどんな財産があるか見当がつかない場合には、不動産であれば固定資産税の明細書、預貯金であれば通帳やキャッシュカード、取引履歴などを探し、各機関に財産の有無を問い合わせます。

財産が確認できた場合には、残高証明書を発行してもらうなどしましょう。

同居人への聴き取り

被相続人に同居人がいた場合には、遺言書や、財産の一覧をまとめたエンディングノート、メモなどの存在について確認します。

また、株などのインターネット取引をしていた等であれば、IDやパスワードについて聴き取りを行います。

信用情報機関への調査

信用情報機関とは、銀行や消費者金融といった金融機関から提供された信用情報を管理・提供する機関のことです。

日本には信用情報機関は3つあり(CIC、JICC、KSC)、それぞれ加盟している金融機関や登録される信用情報の内容・期間などがことなります。

信用情報機関に問い合わせることで、クレジットカードやローンなどの申込・契約・返済状況などを確認できます。

※ただし、信用情報機関への調査の結果、負債が発見されなかったとしても、負債がないことを保証するものではないので、注意が必要です。

④財産の評価

不動産鑑定士による不動産の評価、銀行や証券会社からの資産評価額の取得などを行います。

相続税の計算

収集した財産情報をもとに、必要に応じて相続税を算出します。

財産目録の作成

相続財産の調査が終了したら、被相続人の財産目録を作成します。

財産目録の記載方法について決まりはありませんが、不動産であれば所在地、面積、評価額を、預貯金あれば金融機関名、支店名、残高などがわかるように記載するとよいでしょう。

4.きちんとした相続財産調査でトラブルのない相続を

相続財産調査は、遺産分割協議をスムーズに進める上で欠かせない重要なプロセスです。

この調査を通じて、相続財産の全体像をきちんと把握することで、トラブルのない公平な遺産分割を実現できるからです。


遺産相続を円滑に行うために、一番よい方法としては、生前に遺言書を作成してもらい、財産の内訳や財産額を漏れなく記載しておいてもらうことです。


相続が発生した後で、いざ自分で相続財産調査を行おうと思っても、「どんな財産があるのか全く見当がつかない」「調査するためにどんな書類が必要で、どうやって収集するのかわからない」「財産照会するのも大変な手間で、方法もわからない」といった問題がでてきます。


不動産や有価証券など、市場価値が変動する財産の評価は、専門家でないと判断が難しくなります。


また、相続放棄の手続きには期限があり、「相続があることを知った日から3ヵ月以内」とされています。

自分で地道に財産調査をして、相続財産がマイナスになっていることが発覚したときに相続放棄手続きが間に合わなかったということがないように気をつけなければなりません。


相続財産調査を弁護士に依頼することで、相続財産の調査から、必要書類の取り寄せ、財産照会、財産の評価、遺産分割協議まで、難しい相続手続きをワンストップでお引き受けすることができます。

相続財産調査や相続手続きでお困りの場合には、まず弁護士にお気軽にご相談ください。

この記事を監修した弁護士

弁護士 中川 正一

中川 正一
(なかがわ まさかず)

一新総合法律事務所 
理事/新発田事務所長/弁護士

出身地:新潟県新潟市
出身大学:電気通信大学大学院情報工学専攻(中退)
新潟県弁護士会副会長(平成26年度)、現在は新発田市情報公開・個人情報保護審査会委員、新発田市行政不服審査委員などを歴任しています。

取扱分野は、相続・離婚・交通事故など。その他、借金問題や、建築・不動産、労働問題など幅広い分野に精通しています。
特に相続・成年後見・家族信託等をテーマとしたセミナー講師を務めた実績が多数あります。

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