近年では、家庭において家族による献身的な介護が行われる中で、介護者が体調を崩してしまったり、介護疲れによって要介護者を虐待してしまうなど、悲しいニュースを時々見聞きします。
平成30年版の高齢社会白書によると、65歳以上で要介護または要支援の認定を受けた人は平成27(2015)年度末で606.8万人、そのうち6割弱において、「同居している人」が主な介護者となっているそうです。
主な内訳をみると、配偶者が25.2%、子が21.8%、子の配偶者が9.7%となっています。
介護保険による介護サービスを受けられるようになった現代においても、家族が一定程度の介護を担っているということが、このデータからうかがえます。
そしてここで注目すべきは、「子の配偶者」です。
上記の統計結果から見ますと、単純計算で全国に60万人近くもの方が、配偶者の父または母の介護をしていることになります。
いかがでしょう。想像した以上に多くないでしょうか。
平成27年からは既に3年以上が経過していますので、「子の配偶者」が親を介護している数は、現時点でさらに増えている可能性もあります。
義理の親の介護を、「相続財産を得る」という財産目的でしている人は、おそらくほとんどいないでしょう。
しかしながら、いざ義理の親が亡くなって遺産分割の話し合いになったとき、それまで介護を頑張ってきたお嫁さんまたはお婿さんにとっては、自分に全く相続の権利がないというのは、やはり釈然としない思いを抱かせるものと思います。
たとえば、長男である一郎さんの妻(嫁)が、献身的に一郎さんの父や母を介護したとしても、一郎さんの妻自身は法定相続人ではありませんので、義父母が亡くなった後、その遺産を受け取る権利は原則としてありません。
また、義父母よりも先に一郎さんが亡くなっていた場合は、一郎さんの子らは相続人になりますが、一郎さんの妻は相続人ではありませんので、やはり遺産を受け取ることはできないわけです(なお、義父母と養子縁組をしていたり、遺言を書いてもらっていれば別です)。
一郎さんの母が亡くなったとき、一郎さんが、「オレの妻がおふくろを介護してきたんだから、その分、オレの取り分を多くするかオレの妻にも取り分を認めてくれ」と、きょうだいの二郎さんや花子さんに提案したとしましょう。
「そうだね。今までありがとう。お嫁さんにはお世話になったから、私の分をお嫁さんにあげるよ」
こんなことを言ってくれる健気な兄弟姉妹ばかりであれば良いですが、現実には、そうでないケースも多いと思います。
そんなお嫁さんに、少しだけ朗報です。
今回の相続法の改正で、相続人以外の親族、たとえば、いとこや孫などの6親等以内の血族、義母や子の配偶者などの3親等以内の姻族は、「特別寄与料の請求」ができることになりました。
とはいえ、「請求ができる」イコール「寄与を必ず認めてもらえる」、というわけではありません。
相続人であれ、親族であれ、「献身的に介護をしてきた」からといって、家庭裁判所で簡単には「寄与」が認められることは少ないのがこれまでの傾向です。
また、専門家の間では、相続人ではない人が特別の寄与を主張することによって、相続争いが激化するのではないかといった懸念があるようです(確かに、権利を求める人数が多くなるほど意見をまとめるのは難しくなりますし、小姑VS嫁の争いは容易に想像できますね…)。
もしも、「実の親子ではないけれど、私も介護を頑張ったのだから、取り分を認めて欲しい」というご希望をお持ちの方は、早めにご検討いただき、相続人らと協議されることをおすすめします。
そして相続人らとの協議が調いそうにない場合は、すぐに諦めず、一新総合法律事務所にご相談ください。
相続のご相談は初回無料で承ります。どうぞお気軽にお問い合わせください。