コラム

2019.08.05

コラム

令和から振り返る明治時代の相続制度

1 はじめに

2018年、「民法」という法律の、相続について定めている部分に様々な改正がなされました。

コモンズ通心でも、2019年3月号から、様々な改正点を解説しています。

さて、このコラムでは、上記の「民法」が初めて制定された明治時代に大きく遡って、その時代の相続制度を、令和時代の現在から紹介してみたいと思います。

2 家制度と戸主

明治時代に制定された当時の民法(以下「明治民法」と表記します。)は、主にドイツの民法を参考として作られました。

しかし、親族及び相続に関しては、江戸時代に発達した家父長制的な考え方を受け継ぎ、「家」という概念を基盤として、その家を統率する「戸主」とその他の構成員である「家族」がいるという考え方がとられました。

戸主は、家族の固有財産を除いては、家の一切の財産について所有権を有するものとされていました。

また、戸主はその他にも、家族の婚姻や養子縁組に対する同意権、家族の居所指定権など、家族に対する強い権限を有していました。

3 家督相続

明治民法における相続制度は、戸主を承継する「家督相続」と、その他の家族の固有財産を承継する「遺産相続」との2つがありました。

まず、家督相続は、戸主が死亡もしくは隠居したとき、または、女性の戸主が婚姻(入夫婚姻)して夫が新たな戸主となるときなどに、前戸主が持っていた一切の権利義務を、新たな戸主に承継するというものです(ただし、隠居及び入夫婚姻による家督相続の場合、隠居者及び前女戸主は必ずしも全ての財産を新戸主に渡すのではなく、一定限度の財産を自分の手元に留保することが できまし た 。)。

入夫婚姻時を除く家督相続の順位は、長男が第一順位であり、長男が先に死亡している場合は長男の子、さらに二男以降の男子、非嫡出(かつ認知済み)の男子、女子といった順となっていました。

家督相続は、新たな戸主が単独で一切の権利義務を受け継ぐという点で、現代の相続と大きく異なっていました。

4 遺産相続

戸主以外の家族の固有の財産は、その人の死亡によって相続がなされます。

これが家督相続以外の遺産相続です。遺産相続の順位は、直系卑属(子など)、配偶者、直系尊属(親など)、戸主の順となっていました。

5 おわりに

その後、上記の相続制度は、戦後に家制度の廃止と両性の平等(憲法24条)化がなされたことによって大きく変わり、現代に近い制度となりました。

その後も、特別縁故者制度の新設、配偶者の相続分の引き上げ、非嫡出子と嫡出子との相続分の同等化など、時代を経るに連れて、様々な改正がなされてきました。

相続制度は、それぞれの時代の価値観を取り入れながら、時代に合わせて変化してきたといえるでしょう。

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◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 海津 論

<初出:顧問先向け情報紙「コモンズ通心」2019年5月5日号(vol.232)>

※掲載時の法令に基づいており、現在の法律やその後の裁判例などで解釈が異なる可能性があります。

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