前回(シリーズその3はこちら)は、話す機会を増やし、話をじっくり聴きましょう、というお話でした。
今回は、大切な人、つまり親や子どもに対し、自分の想いや希望をどうやって伝えていくのかについて書かせていただきます。
親子間で起きがちなこと
子どもの頃、親から「宿題やったの?早くやりなさい!」などと言われ、「うるっせーなぁ。今やろうと思ってたのに!」と思わず言い返してしまうこと、誰にでも一度や二度ならずあったはずです。
親は、子どもが宿題を忘れて、学校で恥ずかしい思いをしないように、そしてちゃんと勉強して欲しい、という親心から、子どもに注意をしてくれていたのでしょうね。
でも子どもからしてみれば、「うるさく言われるから、余計にやりたくなくなっちゃうんだよ、ムキー!」なんていう感情が先立ってしまい、親の話を落ち着いて聞く気分にはならなかったはずです。
そしてそんな子どもだったあなたも、今や立派なオトナになり、親も高齢になっりました。
オトナになったあなたは、一週間前に終活セミナーに行ったはずの老親が、セミナーでもらってきたエンディングノートを全然開いていない様子を見かねて、ちょっとイライラしながら「ちょっと〜、エンディングノート書いてみたの?」なんて言ったりします。
オトナになった子どもは、親にもしものことがあったとき、どういう葬儀を希望しているかを聞いておきたいけれど、なかなか口に出せず、こっそりエンディングノートに書いておいてもらえたらいいなぁと思っていたようです。
でも「書いたの?」なんて言われた親は、一体どのような気持ちでその言葉を聞き、行動すると思いますか?
さすがに「るっせーな」とは言わないかもしれません。
そして「今書こうと思ってたのに~」とも言わないでしょう。
でも二度とエンディングノートを開くことはないかもしれませんし、葬儀の話を自分から進んでしてくれることはないかもしれません。
自分の想いをどう伝えるか
相手に何かをやって欲しいと思う時、「アイメッセージ」を使うのも一つの方法と言われています。
例えば、親から子どもには、
「もしオレが倒れた時には、お前に面倒みてもらえるとオレは嬉しいんだけどなぁ」のように。
そして子どもから親に対しては、
「お父さんが急に倒れたりした時のために、お父さんの通帳をどこに片付けてあるのか、今から教えておいてくれると、私、助かるなぁ」
といった感じです。
「I」、つまり自分の感情・想いを込めて相手に伝えるというわけです。
そんなのいつもやってるよ〜、そう思う方もいらっしゃるでしょうね。
でも、本当に相手の状況や考え方に思いを寄せていたかどうか、自分の希望だけを優先していなかったか、少し自分の言葉を反芻してみましょう。
私も大事・相手も大事
対話が深まってきた親子の会話の一例です。
「エンディングノート、思った以上に書くところがあって大変なんだね。私も書いてみようかな。今度の日曜日の午前、一緒に書かない?」
「昔を思い出しながら書くのは、結構面倒なんだぞ。でもお前も書くって言うなら、ちょっとやってみるか。日曜は碁に行くから、土曜日はどうだ?」
このように、私の思いもあなたの思いも尊重する話し方、伝え方を「アサーティブな表現」と言います。
「私もあなたも大事」、自分を押し殺しすぎず、相手を軽んじない表現、話し方は、職場やビジネス上だけではなく、家族間においても、とても大切だと思います。
いろいろな親子関係、そして人にはそれぞれ個性がありますので、話し方や伝え方には、これが大正解!というものはないでしょう。
物理的な三密は回避しつつも、心理的には密接に、大切な人との間では、アイメッセージやアサーティブな表現を用いながら、少しずつ対話が深まり、自分の想いを繋げていけるようになることを願っています。