1 相続放棄が認められないかもしれないケースとは
相続放棄ができるための要件は、期間を守るということだけではありません。
相続放棄前に、自分が被相続人の遺産を取得することを前提として行動を取ってしまうと、「相続を承認した」とみなされ、その後に相続放棄ができなくなります。
どのような場合に、相続を承認したとみなされるのかについては、民法921条各号に規定があります(法定単純承認事由といいます。)。
典型的に問題となるのは、「相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき」(同条1号本文)です。
「相続財産の全部又は一部を処分」したかどうかが問題になるのは、
- 遺産のうち預貯金の一部を引き出した場合
- 被相続人の借金を自分の財産から弁済した場合
- 形見分けの財産を取得した場合
- 相続人間で遺産分割協議がまとまった場合など
です。
2 葬儀費用の支払について
特に、葬儀費用を支払うために預貯金の一部を引き出すケースは多いのではないかと思います。
実務の取扱上、常識的な範囲内での葬儀費用としての引出しであれば、「相続財産の全部又は一部を処分」には該当しないとされているので、これを引き出していたとしても相続放棄は可能です。
しかし、あまりにも葬儀費用としてはあまりにも高額な引出しであった場合や、葬儀費用に加えて他の目的での引出しが含まれている場合には、「相続財産の全部又は一部を処分」があったものとして、相続を単純承認したとみなされ、事後的な相続放棄が認められないケースもあります。
そのため、被相続人の遺産の中に負債がある場合、または負債がある可能性がある場合には、これを調査せずに財産処分をしてしまうと、相続放棄が認められず、共同相続人がその負債を負ってしまうリスクがありますので、注意が必要です。
ある行為が『相続財産の全部又は一部を処分』という要件に該当するかというのは、最終的には裁判所が判断する事項です。
そのため、問題となりうる行為があったとしても、その行為が要件に該当しないということについて説得的な説明を尽くしてみる必要があります。
実際に、一新総合法律事務所の弁護士が代理人として関与し、無事に解決した事例もあります。
被相続人の預貯金から葬儀費用を支払ってしまった後に、多額の負債が判明したような場合は、すみやかに弁護士に相談し、手続を依頼された方が安心です。
一新総合法律事務所は、40年以上の歴史の中で、数多くの相続放棄案件を取り扱ってきた実績がございます。
専門分野の一つとして相続分野に取り組んでいる弁護士も複数在籍し、所内研修や勉強会をとおして、経験や情報を共有し、依頼者の皆さまのご意向に沿うことができるよう、日々研鑽を積んでおります。
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