1 相続放棄手続とは
民法上の「相続放棄」(民法915条等)の手続を採ると、手続を採った相続人は「はじめから相続人とならなかった」ものとみなされます(民法939条)。
そのため、相続放棄をした相続人は、亡くなった被相続人の相続財産(資産と負債の両方を含みます。)を一切取得しない、ということになります。
「相続放棄」に似たものとして、「相続分の放棄」というものがあります。
これにより資産を取得しないことになりますが、被相続人に負債がある場合には、その負担を免れることはできませんので、注意が必要です。
被相続人の負債を取得したくないという場合には、「相続放棄」手続をしなければなりません。
2 相続放棄手続の期間
さて、「相続放棄」をするためには、「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3ヶ月以内に、家庭裁判所に対してその旨の申述をする必要があります(民法915条1項)。
この3ヶ月の期間は、「熟慮期間」と呼ばれることもあります。
相続人が、相続して財産を引き継ぐかどうか検討する期間、ということです。
「自己のために相続の開始があったことを知った時」というのは、被相続人の配偶者や子が相続人になるケースでは、通常は被相続人が死亡した時、ということになるでしょう(厳密にいうと、死亡したとの連絡をもらった時です。)。
この3ヶ月の熟慮期間というのは、思っているよりも短いものです。
お葬式の後、四十九日法要を待っていると、残りは1ヶ月強しかありません。
家庭裁判所は土日祝日が休みですので、実際に手続を採ることができる期間はもっと短くなります。
被相続人の正負の財産を検討するまでもなく相続放棄をするということであれば家庭裁判所への申述だけで済みますが、財産調査を踏まえてプラスかマイナスか判断したいということになると、調査の分時間がかかってしまいます。
また、不動産、預貯金などのプラスの財産であれば判明していることもありますが、相続をした後で負債が判明したということもあります。
もし被相続人に、プラスの財産の他に負債がありそうな場合には、金融機関等からの文書や連絡を待つのではなく、早めに照会した方がよいでしょう。
3 期間の延長
3ヶ月の熟慮期間は、家庭裁判所に請求することによって延長が認められることもありますが、この延長請求自体は、3ヶ月の期間内にしておく必要があります。
また、延長請求が認められるためには、具体的な理由を記載して請求する必要があります。
財産調査の必要性が判然としない中でやみくもに延長請求をしても、認められるケースは少ないでしょう。
以上から、どこにどのような財産があるか全くわからず、調査に時間や手間がかかりそうな場合や、ご商売をされていたことがあるなど、連帯保証も含め、負債がありそうな場合は、弁護士などの専門家に早めに相談し、調査をご依頼されることをお薦めいたします。
一新総合法律事務所は、40年以上の歴史の中で、数多くの相続放棄案件を取り扱ってきた実績がございます。
専門分野の一つとして相続分野に取り組んでいる弁護士も複数在籍し、所内研修や勉強会をとおして、経験や情報を共有し、依頼者の皆さまのご意向に沿うことができるよう、日々研鑽を積んでおります。
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