コラム

2022.04.06

コラム

遺言作成についての弁護士活用法(弁護士:中川 正一)

この記事を執筆した弁護士

弁護士 中川 正一

一新総合法律事務所
弁護士 中川 正一

一新総合法律事務所/新発田事務所長/2005年弁護士登録
早期に事件の見通しを立て、依頼者の不安を解消する。
そのための日々の研鑽を怠らないことを信条としています。

1 遺言のメリット

遺言は、亡くなった後の財産処分などについて、生前に遺言書を作成することによって、ご本人の意思を実現する制度です。

特に、遺言によってのみなしうる行為として、①相続分の指定、②遺産分割方法の指定、③遺産分割の禁止、④遺言執行者の指定などがあります。

2 遺言の方式

遺言には、大きく分けて自らが筆記する自筆証書遺言、公証人に作成してもらう公正証書遺言があります。


自筆証書遺言は、遺言者がすべて自書で書かなければならないとか、相続人が遺言書を発見した際には「検認」という手続が必要、など作成するに面倒なところもありましたが、近年の法改正により、財産目録の自書が不要になったり、法務局の遺言書保管制度を利用することにより「検認」を不要とするなど簡便化が図られています。

3 お勧めの方式は

公正証書遺言は、プロである公証人が作成してくれますから、形式的なミスは通常考えられませんし、内容面においても、法的解釈に争いが生ずるような表現は避けて作成してくれることが期待できます。


では、2で前記のような法改正で利便性が増した自筆証書遺言はどうでしょうか。

たしかに、これまでせっかく自書しても形式的なミスがあったため遺言書として認めてもらえなかった例は多数ありましたが、法務局の遺言書補完制度は形式的要件を事前チェックしてくれますので、形式的なミスは防げるようになりました。


しかし、あなたの意図した記載になっているか、内容面までは誰もチェックしてくれません。

4 内容面の落とし穴

遺言者は自らの意思を自書するわけですから、内容に問題があるとは通常思われないかもしれません。


しかし、遺言書を作成するのは本人であっても、遺言書を読むのは本人が亡くなった後の相続人です。

そうすると、本人にとっては自らの意思ですから当然理解している内容であっても、第三者が読むと理解できない場合があります。

(1)事例①

ア 「遺産は、長男と長女に分けて欲しい。ただし、二男にも少しは分けて欲しい。」

前段は、善解すれば長男と長女に等分で分ける相続分の指定をする意思とも読むことは可能かもしれませんが、後段があることによって、読解困難な遺言になっています。

おそらく、遺言者には「少し」のさじ加減が頭の中にあったのでしょうが、これを読んだ第三者には、理解できないことが通常でしょう。

このように遺言者の頭の中のことを自書で表現できていない場合は、けっして珍しくありません。

イ 弁護士の思考

仮に、弁護士が事前にご本人から相談を受けていたら、「遺留分」というお話しをすることになると思います。

「遺留分」とは、遺言によっても奪うことができない相続人の期待する割合をいいます。

たとえば、亡くなった者の兄弟姉妹以外の相続人が直系尊属のみの場合以外は、遺留分は法定相続分の2分の1と定められています。


先の失敗例では、相続人が長男、長女、二男の3人だけの場合、二男の遺留分は法定相続分3分の1の2分の1である6分の1になります。


遺言者としても、自分の子供たちが法的紛争まですることは望まないのが通常でしょうから、弁護士として、二男に遺留分である6分の1を割り当て、残りの6分の5を長男と長女に等分にすることを提案し、依頼があれば、誤解無く読み取れる遺言案を作成してくれるでしょう。


このように、弁護士に相談し、実際の文書案を作成してもらう依頼をすることで、内容面の不安は大きく改善されます。

(2)事例②

ア 自筆証書遺言に自分の思いを具体的に記載する

勉強熱心な方は、自筆証書遺言の簡便化に伴う講習会などにも参加されて、自筆証書遺言を書いてみようと思い立たれる方もいらっしゃるでしょう。

実際に取りかかると気づくと思いますが、心にイメージしたことを具体的に記載しようとすると、結構難しいものです。

例えば、相続させたい預貯金や株券をどのように表現すれば良いでしょうか。

よくあるのは素直に金額や株式数を記載する方法です。


しかし、遺言を記載した時点では、遺言者はまだ生存されており、その後も支出はあるし、収入がある場合もあります。

そうすると、遺言書に記載された数字と実際の遺産の額が合わないという事態が生じます。

このような場合、割合で表現することが望ましいです。

イ 弁護士の思考

この程度のことであれば、相談で解決するものですが、遺言者に頭の中でやりたいことを具体的に表現することは意外に難しく、事例①の例などは遺言者本人として適切に表現していると思い込んでいるため、訂正可能な時期(遺言者が生存中)に訂正することができないリスクが自筆証書遺言には残っていると思われます。

(3)その他

その他、法的知識がなければ気づかない遺言の書き方として、後記するような「特別受益・寄与分」の問題や、生命保険契約の受取人指定を利用した遺言、代襲相続に配慮した遺言など、いろいろありますので、頭の中のイメージを弁護士に伝えて、表現してもらうことが望ましいでしょう。

5 特別受益・寄与分

難しい言葉で、「特別受益」や「寄与分」というものがあります。


ここでは詳細には説明しませんが、相続人のうち一部の方のみ利益を得ていたり、逆に負担を強いられていたりすると、これらを調整したいという動機から、相続人間で熾烈な争点になります。

このような相続人間の紛争を防止する意図を盛り込んだ遺言書を作成することもできますので、過去の状況等も踏まえて、どのような遺言を作成したらよいか弁護士に相談してみる価値は高いと思われます。

6 遺言執行者

遺言執行者とは、遺言の内容の実現に必要な行為を行うため、遺言により、指定され、又は家庭裁判所により選任された者をいいます。

相続人の1人を遺言執行者として定めることもできます。


ただし、相続人間では、感情面も含め、何かと紛争が勃発する可能性があり、相続人の1人が遺言執行者では信用できないから、遺言執行者の解任を巡って法的紛争になることもあります。

このような紛争を防止するために、予め弁護士を遺言執行者にすることを遺言書に定めることもできます。


このためにも、遺言書のチェック、又は遺言書の作成依頼をする場面で、弁護士を利用し、併せて遺言執行者の依頼をされると良いでしょう。

7 遺言の作成時期

遺言の適齢期について、いくつかの見解がありますが、50代後半頃から遺言の検討することが望ましいと言われたりすることもあります。


若すぎるのではないか、という疑問も持たれるかもしれません。


たしかに、これからまだまだ稼ぎ時のときに自分が亡くなった後のことを考えることは無意味と思われるかもしれません。


しかし、後回しにするとリスクもあります。

(1)予測不能な事態が起きたとき

分かりやすい例は、突発的な事故や身体的障害のおそれがあることです。

誰でも交通事故で突然亡くなってしまうおそれはありますし、認知症になってしまうリスクもあります。


認知症など判断能力に疑義が出た後では遺言書を作成することは困難になりますし、仮に作成しても事後的に紛争になる可能性は否定できません。

(2)単に面倒くさい場合

どうしても年を取ると考えることが面倒になってしまう嫌いがあります。


例えば、親の余命が心配になる頃に、子ども同士で大きな喧嘩が始まってしまい、親名義の土地のうえに自宅を建ててしまった一方が不安になり、親に遺言を書いてもらうことをお願いしても、親は子ども同士の紛争の実態を理解するのもおっくうになり、認知症でもないのに面倒くさいという理由で遺言を書くことを拒否したまま亡くなってしまう、といったような例はおそらく頻繁に発生していると思われます。


このような例では、親が亡くなった後、敷地の相続問題で大きな紛争になることが予想されます。

つまり、年を取り過ぎることは、遺言を検討する適齢期を喪失するリスクを抱えているのです。

(3)大きな遺産がないから大丈夫という誤解

自分には大きな遺産がないから大丈夫と考えていらっしゃる方は、要注意です。

遺産がない、又は借金ばかり、という事案であれば、相続放棄をして終わりにすることもありますが、相続税が発生するかしないかくらいの遺産がある場合は紛争になりやすいです。


例えば、1軒しかない親名義の自宅を取り合ったり、分割が容易でない場合を想像して頂けると分かりやすいと思われますが、このような場合、紛争は熾烈になる可能性が高いです。

(4)親が過去の成功例を体験されている場合

昔であれば、すべて長男が相続し、それで終わりという考え方もありました。

一部地域では民法が変わってからも、その昔の名残が事実上残って、結果的に争いが起きずに相続が終わることもありました。

このように体験から、親も遺言など無くても相続問題が発生しなかったから大丈夫、と考えていらっしゃる方は要注意です。


このような方は、それこそ面倒くさい、と考えがちになりますが、今は時代が変わっており、きちんと民法上の権利を主張される時代です。


特に(3)のように分割が容易でない遺産があったり、相続人の一部のみ過去に大きな生前贈与をしてあげているような場合、前記特別受益の問題が大きく争われる可能性がありますので、ご生存中に相続人間で紛争にならないように配慮してあげる価値は、極めて大きいと思われます。

(5)遺言は何回でも作成可能

以上のような例を参考にすると、遺言作成適齢期は50代後半から始まっていると考えることは、そんなに不自然に感じないのではないでしょうか。


また、遺言は、何回でも作成可能で、撤回も可能ですので、早く作りすぎる心配よりは、被相続人の意向が法的に残されていないことを心配すべきように思えます。

8 最後に

遺言は、自分の資産について語る性質上、あまり他人に見せたくないというお気持ちがあるかもしれませんが、弁護士には守秘義務がありますので、その点は心配される必要はありません。


内容面の落とし穴を回避し、相続人間による紛争を防止する価値に重きをおいた遺言書の作成を試みるために、弁護士に、推定相続人間で何らかの衝突した感情があるか、現時点で表面化していないが不平等に扱われた体感をもっていないか、など過去の事情からお話しされてみてはいかがでしょうか。


そのときの弁護士の助言を聞いてから作成依頼されるかどうかご判断することもできます。


当事務所では毎月、遺言に関する無料相談を優先的に予約できるように相談枠が設定されていますので、是非ご利用ください。


一新総合法律事務所では「相続」に関するご相談は「初回相談無料(45分)」で承っております。

ぜひお気軽にご相談ください。

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