コラム

2021.05.27

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基礎知識

相続法改正② 相続人以外でも遺産を受け取れる~特別寄与料~(弁護士:中澤亮一)

<過去の連載記事はこちら>
・相続法改正①~配偶者短期居住権~

はじめに

相続法改正連載の2回目です。

今回は、この度の改正によって新たに定められた「特別の寄与」制度(以下「特別寄与料」ともいいます。)について概要を解説します。

これまでも「寄与分」という制度はありましたが、どのような違いがあるのでしょうか。

 

特別寄与料の新設

被相続人に対して療養や介護等の世話をした人が、法定相続分よりも多く遺産を取得できるものとして「寄与分」という制度があることは、ご存じの方も多いと思います。

しかし、この寄与分は「相続人」にしか認められていないのです。


例えば、自分の母親(被相続人)が亡くなったときに、子どもである自分は相続人となりますが、自分の妻は相続人となりません。

そのため、自分の妻が熱心に母親(妻からすれば義母)の療養看護をして財産の維持等に寄与した場合であっても、遺産分割手続において、妻自身は寄与分を主張したり財産の分配を請求したりすることはで
きなかったのです。


この問題に対応するため、この度「特別寄与料」(民法1050条)という制度が作られ、相続人以外の者の貢献も遺産分割手続において法的に考慮される道が開かれることとなったのです。

 

 

特別寄与料の要件

特別寄与料が認められるための要件は、①被相続人の親族であり相続人でないこと(内縁の妻などは該当しません)、②無償で療養看護、その他の労務を提供したこと、③被相続人の財産の維持または増加、④②と③の因果関係、⑤特別の寄与、の五つです。

 

実際には、この一つ一つの要件に細かな論点があるため注意が必要なのですが(お困りの際にはぜひ当事務所の弁護士にご相談ください)、特に重要なのは「⑤特別の寄与」の要件です。

これは、貢献の程度が一定程度を超えることを意味し、「その者の貢献に報いるのが相当と認められる程度の顕著な貢献があったこと」と解されます(片岡武、管野眞一「改正相続法と家庭裁判所の実務」日本加除出版株式会社)。

したがって、若干身の回りの世話をしただけといった程度では「特別の寄与」とは認められません。

権利行使期間

もう一つ注意しなければならないのは、調停などを申し立てる場合の期間制限です。

特別寄与料について家庭裁判所に対し調停もしくは審判の申立をする場合には、特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時から6か月以内又は相続開始の時
から1年以内にしなければなりません(民法1050条2項)。


つまり、最長でも相続開始時から1年以内に申立をする必要があります。


<参考文献:片岡武、管野眞一「改正相続法と家庭裁判所の実務」日本加除出版株式会社>

 

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<初出:顧問先向け情報紙「コモンズ通心」2021年3月5日号(vol.254)>

※掲載時の法令に基づいており、現在の法律やその後の裁判例などで解釈が異なる可能性があります。

この記事を執筆した弁護士

弁護士 中澤 亮一

中澤 亮一
(なかざわ りょういち)

一新総合法律事務所 
理事/上越事務所長/弁護士

出身地:新潟県南魚沼郡湯沢町 
出身大学:早稲田大学法科大学院修了
国立大学法人における研究倫理委員会委員、新潟県弁護士会学校へ行こう委員会副委員長などを務めている。
主な取扱分野は、相続全般(遺言書作成、遺産分割、相続放棄、遺留分請求など)。そのほか離婚、企業法務等幅広い分野に精通しています。
相続・生前対策セミナーをはじめ、ハラスメント研修などの講師実績があります。

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