(事案)
Aさんは60代の女性です。
このたび、Aさんの母親が亡くなりました。
Aさんの父親は既に死亡しているので、相続人はAさんの兄のBさんとAさんの2人でした。
Aさんの母親は、生前、Bさんと2人で暮らしていました。
母親が亡くなった後、Bさんは、Aさんに対し、「母親は負債しかなく、遺産はないから遺産分割協議はしない」と一方的に言ってきました。
Bさんは、Aさんに対し、母親の通帳や保険などの資料は一切開示せず、負債についても具体的な説明をしませんでした。
Aさんは、母親と一緒に暮らしていなかったので、母親の負債や遺産について何も分かりませんでした。
そこで、Aさんは弁護士に相談に訪れ、相談した結果、まずは遺産の調査を弁護士に依頼することにしました。
弁護士は、金融機関に照会を行うなど、Aさんの母親について財産の調査を行いました。
その結果、数百万円の預貯金や、相続人を受取人とする保険金といった財産があることが判明しました。
また、負債についても調査したところ、Aさんの母親は既に完済しており、負債はありませんでした。
弁護士は、上記の調査結果をAさんに報告した上で、Aさんから遺産分割手続についての依頼を受けて、家庭裁判所に遺産分割調停の申立をしました。
調停の結果、Aさんは、適正な分割割合に基づいて遺産を受け取ることができました。
(弁護士の解説)
亡くなった方の相続人は、遺産を分けるために、他の相続人との間で話し合いを行う必要があります。
これを、「遺産分割協議」といいます。
しかしながら、遺産を分けようとするにあたって、そもそも亡くなった方(被相続人)の遺産や負債を相続人が十分に知らないこともあります。
特に、被相続人と同居していなかった相続人は、その傾向が顕著であるといえます。
そして、この事例のように、本当は遺産があるのに一部の相続人がそのことを隠す場合や、さらには他の相続人に対して相続の放棄を促す場合もあります。
このような場合、慌てて相続放棄の手続をしてしまうのではなく、まずは遺産と負債について資料をしっかり確認するべきです。
もしもこの事例のように他の相続人が資料を開示してくれない場合、弁護士にご依頼いただければ、被相続人に本当に遺産がないのかを調査するとともに、どのような負債があるかを信用情報機関への照会によって調査することもできます。
相続放棄は、相続人が相続開始を知った時点から原則として3か月以内に行う必要があるため、速やかな判断が求められます。
しかし、たとえば財産や負債の調査が3か月で終わらない場合は、期間の伸長を求めることも可能です。
相続放棄やその他相続に関して、疑問やお悩みがありましたら、お気軽に弁護士にご相談ください。