(事案)
Aさんは60代の女性です。
このたび、Aさんの母が亡くなりました。
父は先に亡くなっていましたので、母の相続人は、Aさんと、兄のBさんの2人だけです。
Aさんの母は、生前、遺言書を作成していました。
その遺言書には、「全財産を長男Bに相続させる」と書かれていました。
そこで、Aさんは弁護士に相談し、「遺留分」について弁護士から詳しく説明を受けた上で、遺留分に関する請求の手続(「遺留分減殺請求」といいます。)を弁護士に依頼しました。
弁護士は、Aさんの依頼を受けた後、まずはBさんに対して、遺留分減殺請求を行う旨の通知を内容証明郵便で送りました。
そして、弁護士はAさんの母の遺産を調査し、調査の結果明らかになった遺産をもとに遺留分を計算して、Bさんに対して、遺留分に相当する財産を引き渡すよう求めました。
しかし、Bさんが引渡しを拒否したため、弁護士は次の手続として家庭裁判所に遺留分減殺請求調停を申し立てました。
最終的には、BさんもAさんの請求を認め、Aさんは母名義の預貯金の一部を獲得することが出来ました。
(弁護士の解説)
最終的に誰にどのような財産を相続させるかについては、亡くなった方(「被相続人」といいます。)が遺言を作成していれば、その意思が尊重されます。
この例のように、子が2人いる場合に、一方のみに全財産を相続させるという内容の遺言も有効です。
ただし、被相続人の兄弟姉妹以外の相続人には、「遺留分」が認められています。
「遺留分」というのは、遺言書よりも優先される最低限の取得分のことです。
上の例では、Aさんには母の遺産総額の4分の1が遺留分として認められます。
したがって、「全財産をBに相続させる」という遺言書の内容にかかわらず、Aさんは自己の取得分を主張することができます。
遺留分を請求する場合には、相続開始および減殺すべき贈与または遺贈のあったことを知ったときから1年または相続開始のときから10年以内にする必要があります。
遺留分の請求をお考えの場合には、早めに弁護士に相談することをお勧めします。