コラム

2021.08.11

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基礎知識

「墓じまい」とは?進め方とトラブル対策(弁護士:海津 諭)

1 少子化と人口移動に伴う、お墓の管理の困りごと

日本全国では、少子化で若い世代の人数が少なくなる傾向や、人が地方から都会に移動していく傾向が、長年にわたって続いてきました。

そのため、先祖代々のお墓が地方都市や集落などにある場合、そのお墓の近くに高齢世代しか居住していないケースや、お墓の近くに親族が居住していないというケースが増えてきています。

そのような状況では、高齢世代や遠方に住む人にとっては、例えば次のような思いを抱くことがあり得ます。

 

①年をとって体力が落ちたので、墓掃除や墓参りが少ししんどくなってきた。

②お墓が家から遠くて、墓掃除や墓参りに行くのが大変だ。
また、普段のつながりが薄いお寺とのやり取りも負担に感じる。

③私の世代ではお墓の管理ができているけれども、子供がみんな遠方に住んでいるので、子供の世代になったらきっと管理が大変だ。

④子供がいない。
甥や姪とはそれほど親しい交流がある訳ではないので、私の後にお墓の管理を頼むのが心苦しい。

 

2 「墓じまい」の増加

 

こうした傾向から、それまで寺院の檀家となって墓地を使用していた人が、お墓を収去して墓地の使用権を寺院に返還する、「墓じまい」を行うケースが増えているようです。

 

お墓に納められている遺骨については、遠方の墓について墓じまいを行うのであれば、管理しやすい自宅の近隣の墓に納骨する方法があります。

また、遺骨の管理を永久的に任せたい場合は、永代供養墓などに納骨する方法があります。

 

3 「墓じまい」の手続

 

墓じまいの手続は、一般的に、次のような手順で行います。

(1)遺骨を移す先の墓地管理者から、「使用許可証」または「受入証明書」を発行してもらう。

(2)現在の墓地管理者から、「埋葬証明書」を発行してもらう。

(3)現在の墓地のある市区町村から、「改葬許可証」を発行してもらう。

(4)お墓の閉眼供養を行い、遺骨を移す。

(5)墓石を解体・撤去する。

 

また、そもそも上記の手続を始める前に、近い関係の親族に対して墓じまいの意向を伝え、了解を得ておくことが、後で親族間の不和を生まないために穏当といえます。

 

4 高額な離檀料を求められるトラブル

墓じまいを行う際の金銭負担としては、まず、墓石の撤去業者に支払う撤去費用があります(業者の費用基準と、お墓の大きさなどによりますが、大体20万円前後のようです)。

次に、それまでのお墓のあった寺院に対し、檀家をやめるにあたって、感謝を表すために「離檀料」を渡すのが一般的です。

 

離檀料の金額については、5万円から20万円程度が多いようです。

しかし、中には、寺院から数百万円といった高額な離檀料を請求されたケースがあるそうです。

 

離檀料は、墓地使用契約で明確に定められていない限りは、法的な性質としては贈与にあたります。

 

そのため、離檀料の支払いはあくまで墓地使用者の自発性に基づくものです。

墓地使用者は、自発性の範囲を超えて一定額の支払いを強制される法的義務まではありません。

 

また、もしも寺院が、「十分な離檀料が支払われていない」ことを盾にとって前記の「埋葬証明書」の発行を拒否した場合、その寺院の拒否行為は違法になります。

 

5 おわりに

 

本稿では、「墓じまい」のことを、皆様に簡単にご説明させていただきました。

 

もしも高額な離檀料を請求されてしまった場合は、弁護士に相談していただければ、解決のために助言をさせていただくことや、代理交渉を承ることが可能です。

その他にも、相続のこと、生前対策のことなど、様々なご相談を承っております。

どうぞお気軽にお問い合わせください。

 

この記事を執筆した弁護士

弁護士 海津 諭

海津 諭
(かいづ さとる)

一新総合法律事務所 
理事/弁護士

出身地:新潟県新潟市 
出身大学:京都大学法科大学院修了
新潟県公害審査委員、新潟県景観審議会委員を務めています。
主な取扱分野は、相続全般(遺言書作成、遺産分割、相続放棄、遺留分請求など)です。そのほか、離婚、金銭問題、その他トラブルなど幅広い分野に精通し、相続・生前対策セミナーの講師を多数務めた実績があります。
また、『月刊キャレル』(出版:新潟日報事業社)に掲載のコーナー「法律相談室」に不定期で寄稿しており、身近な法律の疑問についてわかりやすく解説しています。

 

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