コラム

2019.10.05

コラム

家族信託

家族信託の注意点—受託者の“サボり”と“権限濫用”をいかに防ぐか

1 はじめに  家族信託の仕組み

最近、相続における財産管理・財産承継の手法の一つとして、「家族信託」という手続がメディアで話題になっています。

信託の仕組みを簡単に説明しますと、財産を持っているAさん(委託者)が、ある財産を、自己の所有物から切り離して信託財産とします。

そして、その信託財産をBさん(受託者)が、予め決められた内容に基づいて管理・処分します。

管理・処分によって得られる利益などを、Cさん(受益者)が受け取ります。これらの内容を、信託契約という契約で具体的に設定して、実行していくことになります 。

上記の3人について、AさんがCさんを兼ねる場合もあります 。

他方、BさんがCさんを兼ねてしまうと、法律上のルールによって1年間で信託が強制終了するので、普通はBさんとCさんを同一人物にはしません。

また、AさんがBさんを兼ねることは制度的には可能ですが、一般的に家族信託はAさんが高齢で弱ったときに備える手続なので、普通はAさんとBさんを同一人物にはしません。

信託が終了すると、残っている信託財産は予め決められた人(残余財産受益者、帰属権利者)が受領します。

2 家族信託のメリット

家族信託では、上記のようにBさんが信託財産を管理・処分する方法や、信託がいつ終了するかを、ある程度自由に定めることができます。

また、Cさんを複数人として、最初はC1さんが受益者となり、C1さんが亡くなったら次はC2さんが受益者となる、という設定も可能です。

このように、家族信託は設定内容の自由度が高いことがメリットです。

成年後見や遺言では実現できない内容を、家族信託で実現可能となる場合があります。

3 家族信託の注意点

他方、家族信託で注意しなければならないことの一つは、Bさんが任務を怠ったり、権限を濫用したりする危険性 がある 、ということで す 。

成年後見制度であれば、後見人は少なくとも年1回、裁判所に対して事務内容、収支及び財産状況を報告する義務があり、裁判所による監督がなされます。

他方、家族信託においては、Bさんを裁判所が監督する訳ではありません。

そこで、弁護士等の監督能力のある第三者を、「信託監督人」または「受益者代理人」として付けることが重要です。

信託監督人または受益者代理人は、Bさんの行為を監督し、必要があればBさんに対して適切な履行などを請求します。

4 おわりに

私が聞いた話では、上記の信託監督人も受益者代理人も付いていないという家族信託のケースでは、多数において、Bさんが帳簿を作成していなかったり、定められた管理・処分方法を遵守していなかったりするなど、不適切な状態になっているそうです。

家族信託の設定を考える際には、そもそも希望する内容が遺言や成年後見といった他の制度では実現できないかどうかを、弁護士に相談するなどして検討すべきです。

そして、設定内容の一つとして、きちんと信託監督人または受益者代理人を付けることが重要です。

関連記事はこちら

相続連載①令和から振り返る明治時代の相続制度

相続連載②遺言の件数比較と特徴

◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 海津 

<初出:顧問先向け情報紙「コモンズ通心」2019年7月5日号(vol.2334)>

※掲載時の法令に基づいており、現在の法律やその後の裁判例などで解釈が異なる可能性があります。

悩むよりも、まずご相談ください

相続チーム所属の弁護士が、
最大限のサポートをいたします。

無料相談する
フリーダイヤル 0120-15-4640

※ご相談予約以外のお問い合わせは、各事務所直通電話(平日9:00~17:00)にお願いいたします。

※新潟事務所は、土曜日(9:00~17:00)も受け付けております。

対応地域

新潟県(新潟市、新発田市、村上市、燕市、五泉市、阿賀野市、胎内市、北蒲原郡聖籠町、岩船郡関川村、岩船郡粟島浦村、西蒲原郡弥彦村、東蒲原郡阿賀町、加茂市、三条市、長岡市、柏崎市、小千谷市、十日町市、見附市、魚沼市、南魚沼市、南蒲原郡田上町、三島郡出雲崎町、南魚沼郡湯沢町、中魚沼郡津南町、刈羽郡刈羽村、上越市、糸魚川市、妙高市、佐渡市)、長野県(長野市、松本市、上田市、岡谷市、飯田市、諏訪市、須坂市、小諸市、伊那市、駒ヶ根市、中野市、大町市、飯山市、茅野市、塩尻市、佐久市、千曲市、東御市、安曇野市、南佐久郡、北佐久郡、小県郡、諏訪郡、上伊那郡、下伊那郡、木曽郡、東筑摩郡、北安曇郡、埴科郡、下高井郡、上水内郡、下水内郡)、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、群馬県

ページの先頭へ