
似たような遺言でも債務を含むか否か判断が分かれた事例を紹介します。
1.遺言に債務の記載がないとき、負債は誰が負担する?
相続人 X 、Yがいる事例で「財産全部をYに相続させる。」という遺言があった場合に、遺言に記載のない債務の扱いが問題となりました。
仮に資産1億1000万円、負債1億円の場合に、Xが遺留分減殺請求した場合、「被相続人が相続開始時に有していた財産の価額に贈与財産の価額を加え、さらに、債務の全額を控除して遺留分算定の基礎となる財産額を確定し、それに法定の遺留分の額から、遺留分権利者が相続によって得た財産の額を控除し、同人が負担すべき相続債務の額を加算して算定することになる」(最判H8.11.26)。
Xは、負債は法定相続割合で当然分割されると理解し、自らも5000万円の負債を負うことを前提に、資産と負債の差額1000万円の遺留分(4分の1)として250万円に負債5000万円を加算して請求しました。
しかし、最高裁は、「相続人のうちの1人に対して財産全部を相続させる旨の遺言がされた場合には、遺言の趣旨等から相続債務については当該相続人にすべてを相続させる意思のないことが明らかであるなどの特段の事情のない限り、相続人間においては当該相続人が相続債務もすべて承継したと解され、遺留分の侵害の算定に当たり、遺留分権利者の法定相続分に応じた相続債務の額を遺留分の額に加算することは許されない」と判断しました(最判H21.3.24)。
つまり、「財産全部」に債務が含まれるということです。
2.同じような表現でも「債務を含む」とは限らない
他方で、「財産の全て(現金・預金を含む。)をXに相続させる」は、「財産の全て」に債務は含まれな
い、と判断した裁判例(名古屋地判H14.12.20)があります。
遺言の解釈について、最高裁は、「遺言書の文書を形式的に判断するだけでなく、遺言書の全記載との関連、遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などを考慮して遺言者の真意を探求し」判断すべき(最判S58.3.18)と判示しています。
本件では、被相続人の債務を相続人らが分担して支払ってきた状況を加味して判断されたものです。
3.遺言書の内容は明確に
このように前記1と前記2ではほとんど同じような表現ですが、裁判で争われると債務を含むか否か判断が分かれることがありますので、遺言を作成される場合には、弁護士等の第三者を介在させて、遺言者の背景事情もきちんと説明したうえで作成されることをお勧めします。
相続・遺言・生前対策・成年後見などのご相談は0120-15-4640までどうぞお気軽にお問い合わせください。
<初出:顧問先向け情報紙「コモンズ通心」2025年12月5日号(vol.310)>
※掲載時の法令に基づいており、現在の法律やその後の裁判例などで解釈が異なる可能性があります。

* 記事の内容については、執筆時の法令または情報に基づく
* 当事務所は、本サイト上で提供している情報に関していかなる保証





















