
よく知られている「相続放棄」ですが、意外と誤解も多いものです。
今回は、その代表的なもの3つをご紹介します。
1.財産を取得しなければ、債務も負わない?
相続放棄は、被相続人(亡くなった人)のプラスの財産もマイナスの財産も一切引き継がないものですので、債務を負わなくて済みます。
しかし、この効果を得るには、家庭裁判所に対して相続放棄の申述をして受理されることが必要です。
この点、被相続人に債務がある場合でも、相続人間の遺産分割協議で財産を何も取得しないこととすれば、債務も負わないと思っている方も多いのですが、この方法では、財産を何も取得しない人も、債務は法定相続分に従って相続することになります。
そのため、財産を取得する人が債務は自分が負担すると約束したとしても、その人が支払いを怠れば、財産を取得しない人も、債権者との関係では債務を免れることはできません。
2.母に財産を取得させるためには子が相続放棄をするのがよい?
一般的に特定の相続人に財産を集中させるためには、他の相続人が相続放棄するのがよいと言われていますが、事案によっては注意が必要です。
例えば、父の遺産は、父方祖父母の介護で苦労した母が全部を取得すればよいと考え、子が家庭裁判所で相続放棄の手続きを取ったとします。
父方祖父母等(第2順位の相続人)が他界し、父のきょうだい(第3順位の相続人)もいない場合はよいのですが、子が相続を放棄したことで、これらの人が相続人になると、母はこの人たちと遺産分割協議をしなければならなくなり、かえって面倒なことになりかねません。
そのため、このような事案では、母と子で母が全部を取得するという遺産分割協議をするべきです。
3.相続放棄をしたら、遺産を取得できる可能性はない?
相続人全員が相続放棄をして相続人がいなくなると、相続財産清算人が遺産を換価して必要な支払いをし、それでも残った財産は最終的には国庫に帰属することになります。
この換価の際に、相続放棄をした人が、遺産を買い取ることができる場合があります。
また、残余財産の国庫帰属の前に、亡くなった人と特別の縁故があった人に、残余財産の一部又は全部の分与が認められることがあります。
そして、相続放棄をした人も、要件を満たせば、この特別縁故者として財産を取得できる可能性があるのですが、これが案外知られていないようです。
このような誤解により後悔しないよう、一度、専門家に相談してみることをお勧めします。
相続・遺言・生前対策・成年後見などのご相談は0120-15-4640までどうぞお気軽にお問い合わせください。
<初出:顧問先向け情報紙「コモンズ通心」2025年10月5日号(vol.308)>
※掲載時の法令に基づいており、現在の法律やその後の裁判例などで解釈が異なる可能性があります。

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