コラム

2023.09.14

コラム

代襲相続とは?相続放棄する場合の注意点

はじめに

たとえば、疎遠になっていた父親が亡くなり、その相続人となったときに、その相続財産に多くの債務(借金)がありそうだとか、残された建物や土地の管理や処理が大変そうだといった場合など、相続放棄を検討するケースがあるかもしれません(なお、とくに相続放棄後の不動産の管理(保存)義務については、近時の法改正に関連して別途注意が必要ですが、後述します)。

もしも、自分が相続放棄したら、その債務(借金)や土地建物などは、自分の子どもが相続(=代襲相続)するのではないか?といった疑問や不安が生じてくるかもしれません。

このコラムでは、上記のようなケースに限らず、代襲相続と相続放棄を中心として、広く何世代かに関わる相続関係や相続問題を解説したいと思います。

1.代襲相続とは?

代襲相続制度について

代襲相続とは、相続人となるはずだった子や兄弟姉妹が既に亡くなっているなどして相続権を失った場合に、その者の子等が、その者の相続分を被相続人から直接相続することをいいます(民法887条2項、889条2項)。

なお、このような場合の子や兄弟姉妹を「被代襲者」といいます。

そこでまず、代襲相続が発生する者、つまり代襲者(代襲相続人)の範囲から説明します。

代襲相続のケース①「祖父母」と「孫」

まず、被相続人の子が既に亡くなっていたような場合に、代襲相続が発生します。

たとえば、祖父もしくは祖母が被相続人で、その前に祖父・祖母の子にあたる父親が亡くなっていた場合に、孫が代襲相続人になります。

このような場合の代襲相続人は被相続人の直系卑属(※1)がなりますので(民法887条2項但し書)、孫も亡くなっていたような場合には、さらにひ孫も代襲相続人となります。

このことを再代襲といいます(同条3項)。

※1 直系卑属とは:直系卑属とは、「直通する系統の親族で自分より後の世代の人」ことです。子や孫、養子も含まれます。兄弟・姉妹、甥・姪、子の配偶者は含まれません。
これに対し、直系尊属とは、「直通する系統の親族で自分より前の世代の人」です。父母、祖父母、養父母がこれにあたります。叔父・叔母、配偶者の父母・祖父母は含まれません。

【代襲相続のケース①祖父(祖母)と孫の例

代襲相続のケース②「おじ・おば」と「おい・めい」

代襲相続人の範囲として、相続人が兄弟姉妹となりうるような場合にも、その兄弟姉妹(おじ・おば)が既に亡くなっていたような場合に、その子(おい・めい)に代襲相続が生じます。

ただ、このような兄弟姉妹のケースでは、前述の直系尊属の場合とは異なり、その兄弟姉妹の子が代襲相続されるのであって、さらにその孫の代襲相続つまり再代襲は発生しません(これは民法889条2項が887条3項を準用していないためです)。

なお、遺言等でも奪われない相続の最低限の権利ともいえる遺留分について、代襲相続は被代襲者の立場をそのまま承継しますので、兄弟姉妹(おじ・おば)は遺留分が認められていないため、おい・めいについても遺留分が認められないことになります。

【代襲相続のケース②叔父・叔母(おじ・おば)と甥・姪(おい・めい)の例】

代襲相続が発生する原因 ~死亡・相続欠格・相続廃除

代襲相続が発生する原因としては、死亡以外に、相続欠格相続廃除の場合が考えられます。

①死亡した場合

まず、死亡については、民法上、相続開始「以前」とされているので、被相続人(祖父)と被代襲者(父親)が同時に亡くなった場合にも、代襲相続が生じることになります。

稀なケースでしょうが、大きな事故に巻き込まれなくなった場合などが考えらえます(民法32条の2参照)。 

②相続欠格

つぎに、相続欠格とは、被相続人を故意に死亡させたり、詐欺や脅迫によって遺言書を作成させたりなどのような、重大な違法行為があり、相続権が発生しない場合をいいます。

③相続廃除

また相続廃除は、被相続人に対する虐待や重大な侮辱をしたり、著しい非行があったりした場合に、被相続人がその相続人の相続権をはく奪する場合です。

被相続人が生前に家庭裁判所へ請求するか、遺言書により廃除の意思表示をして、死後に遺言執行者により家庭裁判所に申立を行い、審判で認められれば廃除は完了します。

これらの相続権を失う事由について、代襲相続の場合には、被相続人(例:祖父)と被代襲者(例:父)の関係で存在していても、被相続人(祖父)と代襲相続人(孫)との関係で存在するわけではないので、代襲相続は発生します。

相続放棄の場合には、法律上はこのような規定はないので、代襲相続は発生しないことになりますが、詳しくは後ほど説明します。

養子の子の場合、代襲相続はある?

 前述(代襲相続ケース①)のように、被相続人の孫が代襲相続人となるのは、被相続人の直系卑属だからですが、被代襲者(父)が被相続人(祖父)の実子ではなく養子の場合には、その子(孫)に代襲相続は発生するでしょうか。

代襲相続が発生するかどうかは、養子縁組をした時期によって区別されます。

養子縁組後に生まれた被代襲者の子には代襲相続が発生しますが、養子縁組前に生まれた被代襲者の子には、代襲相続は発生しません。

その理由は、養子による親族関係(直系卑属も)は養子縁組の日から発生するものですから、養子縁組後に生まれた子は被相続人と親族関係がありますが、養子縁組前に生まれた子は被相続人との親族関係は生じないからです。

2.相続放棄した場合、代襲相続は発生する?

相続放棄とは?手続きや期限について

前提として相続放棄について、以下に意義や手続などを簡単に説明します。

相続放棄は、放棄することでその相続に関して初めから相続人でなかったものとみなされるものです(民法939条、相続放棄の遡及効)。

相続放棄のための期間(熟慮期間)は、相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時から3カ月以内にする必要があります(民法915条1項、3か月以内に放棄しないと921条1項2号により法定単純承認となります)。


この「相続の開始があったことを知った時」とは通常は被相続人が死亡した時ですが、相続人に事情があって3カ月を経過してから知った場合など、後述の申述の受理がされるかについては問題があります。

このような例外に関して判例は、被相続人に相続財産が全く存在しないと信じるにつき相当な理由があると認めるときには、熟慮期間は相続財産の全部又は一部の存在を認識した時又は通常これを認識し得るべき時から起算するものとしています。

事例によりますが、裁判例(下級審)では厳格に判断しているものとそうでないものがありますので、注意が必要なところです。


また3カ月では相続財産の実情が十分調査できず相続放棄するかどうか判断がつかない場合には、家庭裁判所に熟慮期間の伸長を求めることができます。

相続放棄の手続・方法については、当事者間で相続放棄を意思表示しても効果はなく(遺産分割における相続分の譲渡とは異なるもの)、家庭裁判所に申述書を提出する必要があります(民法938条)。

そして、家庭裁判所がその申述を受理する旨の審判をすることで、相続放棄は成立することになります。


さらに、冒頭の例で少し述べました相続放棄した後の相続財産の管理(保存)については、今までもどこまで管理すべきか不明確な面があったのですが、近時の法改正で、

その放棄した者が財産を占有しているときに、次順位の相続人や相続財産清算人に引き継ぐまで、自己の財産における同一の注意をもって、財産保存しなければならない

[民法940条1項]

とされました。

このように管理(保存)義務が占有していることなど限定されたことで相続放棄後の管理義務がある程度制限されたといえます。

相続放棄すると代襲相続は発生しない

被代襲者が相続放棄をすると、代襲相続は発生しません。

たとえば祖父が死亡した場合に、父親が相続放棄をすると、子は祖父の遺産相続しないことになります。


相続放棄の場合は、相続欠格や相続廃除とは異なり、法律上代襲相続が発生する規定がないこと、つまり、相続放棄をするとはじめから相続人でなかったことになるため、子どもへの代襲相続もなくなるからです。

相続放棄後に、相続権は誰に移るか?

相続放棄した場合には、その後に続く子への代襲相続が生じないので、相続権は次の相続順位の相続人に移ることになります。


ちなみに、相続人となる順位や法定相続分の一般的な説明となりますが、第一順位として子、第二順位として直系尊属、第三順位として兄弟姉妹とつづきます。

また配偶者はそれぞれの順位とは別に相続権があり、それぞれの順位の相続人との関係で法定相続分が異なることになります。

法定相続分については配偶者の法定相続分は子との関係では2分の1、親との関係では3分の2、兄弟姉妹との関係では4分の1となります(民法900条)。

そして代襲相続人は、その性質・立場からわかるとおり、被代襲者の相続分をそのまま引き継ぐことになり同じ相続分となります(民法901条)。

相続放棄をした場合、次順位の相続人に家庭裁判所から連絡はある?

相続放棄の手続を行ったからといって、家庭裁判所から次の相続順位の相続人に相続放棄したことが通知されるわけではありません。

通常であれば、次順位の相続人が相続するか相続放棄するか判断できるように通知しておくべきであると思えますが、次順位の相続人との関係によっては(誰か、所在など知っているか・全く知らないか、付き合いや行き来があるかどうかなど)、通知できるか・どう通知するかも検討する必要があると思います。

3.注意すべき相続放棄と代襲相続のパターン

代襲相続人は相続放棄できる

最初の話(代襲相続ケース①)に戻りますが、被相続人の祖父に対して代襲相続する孫は祖父の遺産を相続放棄できます。

通常の相続と同様に、代襲相続人自身が被相続人の財産を相続するか放棄するかの判断ができることになります。

父親の遺産を相続放棄後、祖父の遺産だけ代襲相続できる

父親が死亡した場合に、父親の遺産を子は相続(承認)も相続放棄もできるわけですが、父親の遺産を相続放棄した後に、祖父が死亡したような場合に代襲相続が発生します。

この場合は、あくまで子は父親の遺産を相続放棄したに過ぎないからです。

祖父の遺産を相続するか放棄するかどうかは、別の問題であり、父親の相続放棄をしたことで祖父の相続放棄までしたことにはならないからです。

祖父の相続財産について相続したくないと考えている場合には、そのための相続放棄の手続をすることになります。

祖父の相続を父親が相続放棄する前に父親が亡くなった場合はどうなる?再転相続

代襲相続とは異なりますが関連したケースとして、祖父が死亡(第1次相続)した後その相続について父親が相続放棄をしないまま熟慮期間内に死亡(第2次相続)した場合、相続人である子は祖父の相続についての相続放棄をする権利と併せて、父親の権利義務を相続することになります。

このことを再転相続といいます(916条参照)。


その場合に、子が最初に父親の相続(第2次相続)について相続放棄をしたときには、祖父の相続(第1次相続)について相続することはできません。

祖父の遺産も放棄したことになるからです。


これに対して、子が最初に祖父の相続(第1次相続)について相続放棄した場合は、父親の相続(第2次相続)について相続(承認)することも相続放棄をすることができます。

この場合には父親の遺産は相続しても、祖父の遺産(例えば負債や不動産など)を相続しないことも認められることになります。


これらは判例の立場ですが、第1次相続・第2次相続のどちらを先に相続放棄するかで、他が相続放棄できるかどうかが異なりますので、とくに注意が必要です。

なお、祖父の遺産について相続放棄の熟慮期間の起算点となる時期は、父からの相続により祖父の相続人における相続人としての地位を自己が承継した事実を知った時から3カ月内となるとするのが判例です。

4.代襲相続など相続関係がどうなるのか気になる場合や、相続放棄を検討している場合は弁護士へご相談を

代襲相続と相続放棄については法律上の規定があるものの、想定していないさまざまなケースがありますので、相続関係を簡単に判断できないこともおきると思います。

そのような問題や相続放棄の手続については、熟慮期間との関係などもありますので早めに法律の専門家、弁護士等にご相談されることをおすすめします。


相続・遺言・生前対策などのご相談は0120-15-4640までどうぞお気軽にお問い合わせください。

この記事を執筆した弁護士

佐藤 明
(さとう あきら)

一新総合法律事務所 
副理事長/長岡事務所長/弁護士

出身地:新潟県長岡市 
出身大学:新潟大学法学部卒業
新潟県弁護士会副会長(平成25年度)などを務める。
取扱い分野は、相続や離婚などの家事事件のほか、団体では企業法務、自治体法務、学校法務など幅広い分野に対応しています。
社内研修向けにハラスメントセミナーや、相続・遺言、成年後見制度をテーマとしたセミナーで講師を務めた実績があります。

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