コラム

2022.12.23

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相続土地国庫帰属法とは? 土地の要件と手続きについて解説(弁護士:後藤 晋太郎)

この記事の執筆者

弁護士 後藤 晋太郎

一新総合法律事務所
弁護士  後藤 晋太郎(ごとう しんたろう)

一新総合法律事務所 新潟事務所所属

お客様の問題解決のために、私は、まず一人の人間としてお客様と真摯に向き合い対話を行います。その上で、一法律家の視点で法的解釈、具体的解決方法を明示していくことを大切にしています。
そして、お客様の満足のいく結果に繋がるように熟慮し、迅速かつ丁寧に取り組むことを心がけています。
ご相談いただいた後、お客様が問題から解放されたという安心感、解放感を感じていただけたら幸いです。
まずは一人で悩まず、些細なことでもご相談いただければと思います。

1.相続土地国庫帰属法 (※1)とは

相続土地国庫帰属法は、令和3年4月に成立しました。

この法律の成立により、相続した不要な土地を国に引き取ってもらうことができるようになります。

法律の正式名称は、「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」といいます。

この法律の運用は、令和5年4月27日から開始されます。

開始は、令和5年からですが、制度開始前に相続等によって取得した土地についても、この制度の対象とされています(例:数十年前に相続した土地)。

\ポイント/
・相続土地国庫帰属法は、相続した不要な土地を国に引き取ってもらう制度である。
・令和5年4月27日から開始され、開始以前に取得した土地も対象となる。

2.相続土地国庫帰属法が創設された背景

近年、「土地を相続したけれど手放したい。」「地方にある土地の管理が大変だ。」など考える人が増えていました。

このような事情から、所有者不明の土地が増加し、土地の管理不全化を招いていることが社会問題とされていました。

そこで、所有者不明の土地が生じることを予防し、土地の管理不全化を防止するために、相続等により取得した土地を手放すことを認め、国庫に帰属させる(国に譲り渡す)ことを可能とする仕組みが創設されることになりました。

もっとも、国が土地を引き取れば、国が土地の維持・管理に費用や労力を費やすこととなります。
そのため、むやみに土地を国に譲り渡せるのではなく、一定の要件が定められています。

特に「申請可能な相続人の範囲(申請権者の要件)」及び「利用可能な土地(土地の要件)」、の2点がポイントです。

\ポイント/
・所有者不明土地の発生を予防し、土地の管理不全化を防止するため、国庫に帰属させることを可能とする仕組みが必要であった。
・土地の維持・管理には、費用や労力がかかるため、国庫帰属を認めるための要件が定められている。

3.承認申請ができる人

相続土地国庫帰属制度を利用できるのは、相続又は遺贈(相続人に対する遺贈に限ります。)によりその土地の所有権を取得した人に限られます。


売買や贈与などで取得した土地については、この制度の対象外となり、申請資格が認められません。


土地を数人で共有して所有している場合には、共有者の全員が共同して申請する必要があります。
土地の共有持分を相続等以外の原因により取得した共有者(例:売買により共有持分を取得した共有者)がいる場合であっても、相続等により共有持分を取得した共有者がいるときは、共有者の全員が共同して申請を行うことによって、本制度を活用することができます。

また、共有者の一部が法人であっても、相続等により共有持分を取得した者と共同して行うときは、申請資格が認められます。

\ポイント/
・制度を利用できるのは、相続等によりその土地を取得した人に限られ、売買や贈与などで取得した土地については申請資格が認められない。
・土地を数人で共有して所有している場合には、共有者の全員が共同して申請する必要がある。

4.対象となる土地

相続土地国庫帰属法では、対象となる土地が「通常の管理又は処分をするに当たり過分の費用又は労力を要する土地」に該当しないというものです。

この要件については、(1) 申請をすることができないケース(却下事由)と(2) 承認を受けることができないケース(不承認事由)がそれぞれ5つずつ定められています。

具体的には、次のとおりです。

(1)申請をすることができないケース(却下事由)

・建物の存する土地

・担保権又は使用及び収益を目的とする権利が設定されている土地

・通路その他の他人による使用が予定される土地として政令で定めるものが含まれる土地
 (現に通路の用に供されている土地・墓地・境内地・現に水道用地、用悪水路又はため池の用に供されている土地を指します。)
・土壌汚染対策法上の特定有害物質により汚染されている土地

・境界が明らかでない土地その他の所有権の存否、帰属又は範囲について争いがある土地

(2)承認を受けることができないケース(不承認事由)

・崖(勾配、高さその他の事項について政令で定める基準に該当するものに限る。)がある土地のうち、その通常の管理に当たり過分の費用又は労力を要するもの

・土地の通常の管理又は処分を阻害する工作物、車両又は樹木その他の有体物が地上に存する土地

・除去しなければ土地の通常の管理又は処分をすることができない有体物が地下に存する土地

・隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ通常の管理又は処分をすることができない土地として政令で定めるもの

・上記のほか、通常の管理又は処分をするに当たり過分の費用又は労力を要する土地として政令で定めるもの
※上記の政令は、「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律施行令」という名称です。

\ポイント/
・(1) 申請をすることができないケース(却下事由)と(2) 承認を受けることができないケース(不承認事由)がそれぞれ5つずつ定められている。
・「建物付きの土地」や、「管理や費用がかかる土地」はこの制度が利用できない。

5.申請手続の概要

相続土地国庫帰属制度の利用は、次の流れで進みます。

(1)相続人による申請

承認申請書と一定の添付書類を提出し、審査手数料を支払います。

書類等の申請先は、帰属させる土地を管轄する法務局・地方法務局になる予定です。


承認申請書の記載内容と添付書類は、『相続土地国庫帰属法施行規則』で決まります。
規則の案文が公表されたので、紹介しておきます。

承認申請書には、

・承認申請者の氏名又は名称及び住所
・承認申請に係る土地の所在、地番、地目及び地積
・承認申請者又はその代表者若しくは法定代理人の記名押印
・【承認申請者が法人の場合のみ】代表者氏名
・【法定代理人によって承認申請をする場合のみ】当該法定代理人の氏名又は名称及び住所並びに法定代理人が法人であるときはその代表者の氏名

といった申請権者の要件と土地の要件の内容を記載します。


また、承認申請書には、

・承認申請者又は法定代理人の電話番号その他の連絡先
・手数料の額
・承認申請の年月日
・承認申請書を提出する管轄法務局長の表示

の記載も必要です。


添付書類としては、

・印鑑証明書
・承認申請に係る土地の位置及び範囲を明らかにする図面
・承認申請に係る土地の形状を明らかにする写真
・承認申請に係る土地と当該土地に隣接する土地との境界点を明らかにする写真
・名義変更に関する承諾証書面
・【相続登記未了の場合のみ】相続資格の証明書
・【親権者や後見人等の法定代理人の場合のみ】戸籍その他の資格証明書
・【法人の場合のみ】商業登記謄本

を添付します。

(2)法務局担当官による書面審査

申請が受理されると、法務局担当官による書面審査が行われます。

例えば、審査の中で、①申請資格や②審査手数料の納付等がないと、その時点で申請が却下されることになります。
また、承認申請書の記載不備や添付書類漏れがある場合には、申請が却下される場合や補正を促されることが考えられるので、十分に用意をしておく必要があるでしょう。

(3)法務局担当官による実地調査

書面審査を通過すると、法務局担当官による実地調査が行われます。

担当官は、申請された土地やその周辺の地域にある土地の実地調査を行います。

また、担当官には必要に応じて申請者やその土地の関係者から事実を聴取したり、追加の資料提供を求めることができる権限が与えられています。

(4)審査結果の通知

上記の審査を通過した場合、法務大臣から承認の通知がされます。

この際に、負担金の額も併せて通知されます。

(5)負担金の納付(※2)

土地所有権の国庫への帰属の承認を受けた場合、承認された土地の10年分の管理費用として、負担金を納付しなければなりません。

負担金の金額については、20万円を原則としつつ、一部の①宅地、②田畑、③森林については、必要となる管理行為を踏まえ土地の面積に応じた負担金が算定されます(政令4条1項)。

なお、負担金として想定されているのは、土地の性質に応じた標準的な管理費用を考慮して算出した10年分の土地管理費相当額となります。

負担金は、負担金額の通知を受けた日から30日以内に、負担金を納付する必要があります。

期限に間に合わないと、承認の効力が失効するため注意が必要です。

(6)国庫帰属

申請者が負担金を納付したときは、その納付の時に、土地の所有権は、国に移転します。

\ポイント/
・申請の手続きは、
「相続人の申請→書面審査→実地調査→法務大臣による承認→負担金の納付→国庫帰属」
という流れである。
・前記「3、承認申請ができる人」及び「4、対象となる土地」の要件を確認するために、書面審査及び実地調査が行われる。
・土地管理のために負担金を納付する必要がある。

6.承認の取消しと損害賠償責任

なお、国の審査が通った場合でも、処分の取消しや損害賠償責任が問題になる場合がある点には注意が必要です。

申請者が偽りその他不正の手段により国庫帰属の承認を受けたことが判明したときは、承認が取り消されることがあります。

また、申請者が、「4、対象となる土地」の要件について、承認されない土地であることを知っていながら、土地を国に引き取らせ、その結果、国が損害を被った場合には、国に対する損害賠償責任が発生します。

申請の際には、十分に準備が必要です。

\ポイント/
・虚偽等により承認された場合には、処分の取消しや損害賠償請求が発生する可能性がある。

7.相続土地国庫帰属法の利用にあたって

不要な土地を相続して所有している人は、この制度を利用して土地を国に譲り渡すことで、土地の管理から解放されます。

ただし、これまで記載しましたとおり、土地を譲り渡すことの承認を得るためには、必要な書類の作成、申請、国の書面審査、実地調査といった手続きを経る必要があり、簡単な手続きとまではいえません。
最初の申請書類の作成も、一般の方がご自身でなさるのが大変なケースもありえます。

手続きに過度の時間と労力を費やしてしまったり、失敗してしまったりすることのないよう、早い段階で弁護士に相談なさることをお勧めいたします。

_____________

【参考URL】
※1 法務省HP「相続土地国庫帰属制度の概要」https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00457.html
※2 法務省HP「相続土地国庫帰属制度の負担金」https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00471.html


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