【事案の概要】
Aさんは40代の女性です。
このたび、夫のBさんが急死しました。
相続人は、Aさんと、AさんとBさんとの間に生まれた子であるCさんの2人でした。
Cさんは未成年でした。
Aさんは、Bさん名義になっている自宅の土地と建物を自分の名義に変えたいと思い、Bさんの財産のうち、Aさんが主に不動産を相続し、Cさんが主に預金を相続するという遺産分割の案を考えました。
しかし、Cさんが未成年者であるため、具体的な手続をどのようにすればよいかがわからず、当事務所に相談にいらっしゃいました。
弁護士は、Cさんに「特別代理人」という人を裁判所で付けてもらう必要があること、そしてその特別代理人とAさんとの間で遺産分割協議を行うべきであることを説明しました。
そして、弁護士はAさんから依頼を受け、特別代理人選任申立ての手続を行いました。
特別代理人には、Cさんの叔父が選ばれました。
Aさんは、特別代理人であるCさんの叔父との間で遺産分割協議を行いました。
そして、Aさんが主に自宅の土地と建物を相続し、Cさんが主に預貯金を相続するという内容で遺産分割協議書を作成し、法務局への登記変更申請によって、無事に土地と建物の所有名義をAさんに移しました。
【弁護士の解説】
亡くなった方の相続人は、遺産を分けるために、他の相続人との間で話し合いを行う必要があります。
これを、「遺産分割協議」といいます。
未成年者は、原則として単独で法律行為ができません。
通常は親権者が未成年者の代理人となって、未成年者に代わって法律行為を行います。
しかし、この事案のように未成年者と親権者がどちらも相続人である場合においては、一方が多く相続すれば他方が相続する分が少なくなるという、利益相反の関係にあります。
このような利益相反の場合においてまで、親権者が未成年者の代理人を兼ねると、親権者は自己の相続する財産を自由に多くして、未成年者の利益を侵害しかねません。
そこで、このような利益相反の場合には、親権者以外の人を「特別代理人」として裁判所から選任してもらう必要があります。
特別代理人は、未成年者に代わって、未成年者の利益が害されないように法律行為を行います。
このように、親権者と未成年者が利益相反の関係にある場合には、特別代理人が選任されることによって、未成年者の利益が守られます。