【事案の概要】
相談者は80代の男性です。相談者は、亡くなった父が管理していた土地について、自分が相続したものと思って、管理を続けてきました。
ところが、相談者が土地の登記を改めて調べてみると、土地の所有者となっている人は、相談者の父ではなく別の方でした。
どうやら遠縁にあたる方のようですが、何十年も前に亡くなっていて、その後も相続登記がされないまま現在に至っていました。
相談者は、今後も自分が土地を管理していくため、土地の名義を変更したいと当事務所の弁護士に相談しました。
弁護士は、まず土地の名義人の相続関係調査を行いました。
何十年も遡って調査したところ、相談者は相続人ではないことがわかりました。
相談者は相続人ではありませんでしたが、父の死後30年以上にわたり、土地を管理し、固定資産税を負担してきたことから、時効取得による所有権移転手続きを行うことにしました。
そこで、各相続人に上記事情及び時効取得に基づく所有権移転登記手続請求訴訟を提起予定である旨の連絡文書を送付しました。
その後の訴訟手続きでは、相談者が土地を取得することに反対する相続人はおらず、無事に相談者が土地を時効取得して、所有権の移転登記が完了しました。
【弁護士の解説】
相続登記が未了になっている土地について、相続人であれば遺産分割手続きを行うことになりますが、今回の事例では相談者は相続人ではありませんので、時効取得によって所有権を移転しました。
所有権の時効取得には、民法162条で下記のように定められています。
1 二十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。
2 十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。
相談者は、土地を父の財産だと信じ、占有開始から20年以上占有・管理しており、時効取得が成立しています。
各相続人から所有権の主張もなかったため、短期間で判決が言い渡され、所有権移転登記ができました。
先祖代々の土地など相続登記が未了になっていることがありますので、相続が発生した際は、不動産の名義についてよく確認することが必要です。
また、相続が未了の場合、この事例のように何十年も遡っての相続人調査は容易ではなく、相続人も多数になることもあるので、弁護士にご依頼いただくことをお勧めします。
当事務所には司法書士資格を持つ弁護士も在籍していますので、相続手続きだけでなく、登記手続きに関してもご依頼いただけます。相続登記が未了の土地や相続登記についてお悩みがある方はお気軽にご相談ください。