【事案の概要】
Aさんは50代の男性ですが、このたび、自宅で同居していた母親が亡くなりました。
Aさんには60代の兄のBさんがおり、父親はすでに亡くなっていました。
Aさんと母親が同居していた自宅は新潟県内にあり、Bさんは東京都内に住んでいました。
母親の遺産としては、自宅の土地建物や預金等がありました。
遺言書はありませんでした。
Aさんとしては、母親とそれまで生活していた自宅の土地建物だけは、今後も自分が住んでいけるように、どうしても自分が相続して所有したいと希望していました。
Aさんは、母親の葬儀等を終えた後に、Bさんとの間で遺産についての話合いをしました。
しかし、自宅の土地建物をどちらが所有するかについて意見が分かれてしまい、なかなか結論を出せずにいました。
また、Bさんは預金についても、法定相続分よりも多い取り分を主張していました。
そこで、Aさんは当事務所の弁護士に相談し、相続について弁護士に委任することにしました。
弁護士は、Aさんの代理人としてBさんと交渉を行いましたが、交渉では合意に至りませんでした。
弁護士は次に、家庭裁判所に遺産分割調停の申立てを行い、調停の手続を行いました。
しかし、調停でもBさんは自分の意見を変えず、合意に至りませんでした。
そのため、弁護士は次の手続として、遺産分割審判手続への移行を裁判所に求め、手続が調停から審判に移行しました。
審判の手続では、弁護士が法律及び過去の裁判例等を踏まえながら適切な主張を行い、その結果、裁判官の判断によってAさんは自宅の土地建物を相続することができました。
全体的な分割の内容についても、Aさんは納得できる内容で解決に至ることができました。
【弁護士の解説】
遺産分割の手続きは、大きく、①協議、②調停、③審判の3つのステップがあります。
遺産分割を行う場合には、まず、相続人同士が遺産の分け方などについて話し合いを行います。
この話し合いを、「遺産分割協議」といいます。
協議で意見がまとまれば、遺産分割は最も早期かつ簡易に解決に至ります。
しかし、相続の際には相続人の各人が様々な意見を抱いているのが通常であり、もしも意見に相違があって、協議を重ねてもその相違が解消できなかった場合は、協議では解決し難い状況になります。
そのような場合には、次に、裁判所に対して遺産分割調停を申し立て、調停の手続(裁判所において調停委員を間に入れて話し合うという手続)を行います。
裁判所というある程度厳粛な場で、かつ調停委員を間に入れて話し合うことによって、前記の協議では解決しなかった意見の対立も解決する場合があります。
しかし、この調停もあくまで話合いの手続であり、どうしても意見がまとまらない場合もあります。
その場合は、調停手続から審判手続に移行します。
この審判手続では、当事者の主張内容と証拠を踏まえて、裁判所(裁判官)が遺産の分割方法について決定します。
このように、遺産分割では3つのステップを順に行っていきます。
他の相続人が意見を変えてくれず合意ができない場合でも、この事案のように最終的に裁判官によって分割内容が決まる手続がありますので、遺産分割を諦めて長期間保留してしまう必要はありません。
また、協議の段階から弁護士が関与すれば、法律等に基づいた適正な分割案を他の相続人に示すことによって、理性的な話し合いができて無用な対立が避けられることもあります。
詳しくは、当事務所の弁護士までお気軽にご相談ください。