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2023.12.14

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基礎知識

相続登記の義務化|対象となるのはいつから?手続きの方法や、手続きをしなかった場合のリスクについて

1.相続登記が義務化されます!

不動産(土地や家など)を相続した場合、不動産の名義を相続人に変更することが必要です。

この、相続にともなう名義変更のことを、「相続登記」といいます。


この度、法改正によって、2024年4月1日から相続登記が義務化されることとなりました。

本コラムでは、法改正がおこなわれた背景や、改正のポイント、相続登記の手続きなどについて解説いたします。

相続登記とは?

不動産(家や土地)の所有者が亡くなって相続がなされたとき、その不動産の所有者が変わったことを公に示すために、法務局で登記簿上の所有者を故人から相続人に名義変更する必要があります。

この、相続に基づいて不動産の名義変更をおこなうことを、「相続登記」(相続を登記原因とする所有権移転登記)といいます。

どうして義務化された?法改正がおこなわれた背景

近年、例えばある不動産に利害関係をもつ人などが、その不動産の所有者を調べて連絡を取ろうとしても、登記簿上では故人が所有者のままとなっており、現在の所有者やその連絡先がわからないというケースが増加しています。


このような、不動産の現在の所有者や連絡先が不明であるという問題は、大きな社会問題となっています。


平成28年度に国土交通省が実施した上記調査によりますと、所有者不明土地を合計した広さは、約410万ヘクタールにのぼります。

これは、九州の土地面積(約368万ヘクタール)を上回るほどの膨大な広さです。

また、所有者不明率も20.3%と高い数値となっています。

[参考]国土交通省:平成28年度地籍調査における土地所有者等に関する調査
https://www.kok.or.jp/project/pdf/fumei_land_issues_document.pdf

▼相続登記の義務化について詳しくはこちら▼
関連コラム「相続登記が義務化されます」

2.相続登記の義務化で何が変わる?

相続登記の義務化はいつから?

今回の法改正で変わったことは、相続登記の義務化により、これまで任意だった相続登記に期限ができたことです。


改正された法律が施行されて義務化が始まるのは、2024年(令和6年)4月1日からです。

また、その前に既に発生していた相続にも、この法改正は適用されます。

相続登記の手続き期限はいつまで?

相続登記は、「相続の開始および不動産の取得を知った日から3年以内」に、法務局で相続登記の申請をしなければいけません。(※不動産登記法 第76条)

法改正前の過去の相続分も対象になる

今回の法改正は、施行日よりも前に相続で取得した不動産についても適用されます。

つまり、2024年(令和6年)4月1日よりも前に発生した相続についても、相続登記の義務が生じます。


なお、過去の相続分の相続登記の期限は、「不動産の取得を知った日」もしくは「施行日」の遅い日から3年以内となります。(※民法等の一部を改正する法律 附則 第5条)


施行日の時点で、未登録の相続不動産がある場合は、施行日(2024年4月1日)から3年以内に相続登記を申請することが必要です。


なお、平成30年から、全国の法務局では、登記簿情報から30年以上相続登記されていない土地を探し、法定相続人を探す作業をしています。


この対象となった土地の相続登記を促すために、相続人の任意の1名に対して、「長期間相続登記等がされていないことの通知」が送付されています。

もしもこの通知を受け取った場合は、対象の土地について速やかに相続登記を行いましょう。

相続登記をしないとどうなる?罰則などについて

相続登記をすべき人が、正当な理由がないにもかかわらず期限までに登記申請をおこなわなかった場合、10万円以下の過料が科せられます。


「過料」とは、行政上の秩序の維持のために、違反者に制裁として金銭的負担が課せられるものです。

刑事罰とは違って前科にはなりませんが、法律違反に対する罰であり、可能な限り避けるべきといえるでしょう。

3.相続登記をすることのメリット

相続登記を適切におこなうことは、罰則を避けるというネガティブな側面だけではなく、それによって相続人にも実質的なメリットがあります。

以下でそのメリットの例を紹介します。

相続関係の複雑化を防止する

例えば、ある不動産の所有者が亡くなった場合で、相続人である子が遺産分割の手続きや相続登記をせずに放置しているとき、相続人である子も亡くなってさらにその下の世代(元の所有者の孫)まで相続権が移り、相続人が増えて相続関係が複雑になってしまうおそれがあります。

適切に遺産分割や相続登記を済ませることによって、権利関係や手続きの複雑化を防止することができます。

不動産の売却や、担保にして融資を受けることができる

相続した不動産を相続人が自分で使用する必要がなく、売却したいという場合、通常は登記名義が故人のままでは売却することができません。

また、不動産を担保として融資を受けようとする場合も、登記名義が故人のままでは担保として受け付けてもらえません。


相続登記を適切におこなうことによって、その後の売却や担保設定といった土地活用が可能になります。

差押えや不当な売却を防ぐ

例えば、相続人が複数いる中で、そのうちの一人(Aさんとします)が遺産分割手続きによってある不動産を相続したけれども、相続登記をしていなかったとします。


この場合、他の相続人が、遺産分割の前に有していた持分を差し押さえられたり、他人に売り渡したりしてしまったら、そのような差押えや売却の方が遺産分割に優先してしまい、Aさんは自分の権利を主張できなくなってしまうおそれがあります。


相続登記をおこなった後であれば、このように他の相続人との関係での差押えや不当な売却のおそれはなくなります。

4.すぐに相続登記ができない、相続したくない場合‐新たな制度を利用

①相続人申告登記

相続人申告登記とは

相続人申告登記とは、①不動産の登記簿上の所有者が亡くなって相続が開始されたこと、及び、②自分がその相続人の一人であることを法務局に届け出る手続きです。

この制度も、2024年4月1日から開始します。

どんな時に利用する?活用場面と手続きの方法

相続人申告登記は、例えば、遺産分割協議がまとまらずに長引いてしまっている場合などに有効です。

相続人申告登記の手続きをおこなう場所は、相続登記と同じく法務局です。

また、相続人申告登記は、相続人全員がそれぞれ手続きをする必要があります。

②相続土地国庫帰属制度

相続土地国庫帰属制度とは

相続土地国庫帰属制度とは、相続財産の中に相続人にとって不要な土地がある場合に、一定の要件をみたせば国に引き取ってもらうことができる制度です。

相続により土地の所有権を取得した相続人(共有の土地の場合は所有者全員)が申請することができます。

国に引き取ってもらえる土地の要件

ただし、次のような土地は、制度の対象とならず、国に引き取ってもらうことができません(より詳しくお調べになる場合は、法務省のウェブサイトなどをご参照ください)。

  • ・建物の存する土地
  • ・担保権または使用及び収益を目的とする権利が設定されている土地
  • ・通路その他の他人による使用が予定される土地として政令で定めるものが含まれる土地
  • ・特定有害物質により汚染されている土地
  • ・境界が明らかでない土地その他の所有権の存否、帰属または範囲について争いがある土地
  • ・崖がある土地のうち、その通常の管理に当たり過分の費用または労力を要する土地
  • ・土地の通常の管理または処分を阻害する有体物が地上に存する土地
  • ・除去しなければ土地の通常の管理または処分をすることができない有体物が地下に存する土地
  • ・隣接する土地の所有者その他の者との争訟によらなければ通常の管理又は処分をすることができない土地として政令で定めるもの
  • ・通常の管理又は処分をするに当たり過分の費用又は労力を要する土地として政令で定めるもの

手続きの方法と費用

相続土地国家帰属制度を使うためには、法務局で申請をおこない、法務大臣の許可を得る必要があります。

申請の際に審査手数料を納付する必要があり、また、審査が通った場合には負担金を納付する必要があります。

▼相続土地国庫帰属制度について詳しくはこちら▼
関連コラム「相続土地国庫帰属法とは? 土地の要件と手続きについて解説」

5.氏名や住所の変更登記も義務化されます

なお、相続登記の他に、登記上の所有者が引っ越しや結婚などで住所・氏名が変更になった場合の変更登記も義務化されます。


上記の変更登記につきましては、登記簿に記載されている住所又は氏名に変更が発生した日から2年以内に変更登記をする必要があります。

変更登記を正当な理由なくおこなわなかった場合は、5万円以下の過料が科せられます。


改正法が施行され、上記の変更登記が義務化される時期は、2026年(令和8年)4月1日からです。

施行前に住所・氏名の変更が発生していたケースにも適用されます。

6.相続登記の手続きについて

相続登記の手続きは、対象となる不動産を管轄する法務局に、登記申請書とその他の必要書類(戸籍謄本等の関係書類、遺産分割協議書または遺言書、住民票写しなど)を提出することでおこなうことができます。

また、不動産の評価額に応じた登録免許税を納める必要があります。

7.まずは弁護士にご相談ください

相続登記の義務化に伴い、遺産分割など、相続登記に至るまでの一連の相続手続きも先延ばしにすることが難しくなりました。


故人が遺言によって分け方を明確に定めておいたり、円滑かつ円満に遺産分割ができたりするケースならば、手続きに大きな問題はありません。

他方、例えば財産を調査するのに手間がかかったり、相続人が多数であったり、相続人の中に住所不明の人や認知症などで判断能力の不十分な人がいたり、相続人それぞれの希望がうまくかみ合わないなどの場合は、遺産分割の手続きが難航するおそれがあります。

そのようなケースは少なくありません。


弁護士であれば、生前に遺言書の作成をお手伝いさせていただき、亡くなった後はその遺言書のとおりに遺言執行の手続きをおこなうことが可能です。


また、死後で遺言のないケースなどでは、相続人の方から財産調査、相続人調査や遺産分割協議のご依頼をお受けすることも可能です。


相続に関するお悩みやご相談などがございましたら、まずは当事務所までお気軽にご連絡ください。

この記事を執筆した弁護士

弁護士 海津 諭

海津 諭
(かいづ さとる)

一新総合法律事務所 
理事/弁護士

出身地:新潟県新潟市 
出身大学:京都大学法科大学院修了
新潟県公害審査委員、新潟県景観審議会委員を務めています。
主な取扱分野は、相続全般(遺言書作成、遺産分割、相続放棄、遺留分請求など)です。そのほか、離婚、金銭問題、その他トラブルなど幅広い分野に精通し、相続・生前対策セミナーの講師を多数務めた実績があります。
また、『月刊キャレル』(出版:新潟日報事業社)に掲載のコーナー「法律相談室」に不定期で寄稿しており、身近な法律の疑問についてわかりやすく解説しています。


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