コラム

2019.04.18

コラム

基礎知識

民法改正に伴う預貯金の仮払い制度の新設

はじめに

2018年7月、「民法」という法律の、相続について定めている部分に様々な改正がなされました。

これによって、相続に関する法制度が大きく変わることになります。

今回は、法改正がなされた内容のうち、「預貯金の仮払い制度」が新設されたことを解説いたします。

被相続人が亡くなった場合の、預貯金口座の凍結

一般的に、金融機関は、その金融機関に預貯金口座を有している人が亡くなったことを知った場合、直ちにその口座を凍結して出金手続きができないようにします。

これは、相続人の一人が預貯金を引き出すと、後にその出金について他の相続人との間で争いが起こるという事態が考えられるため、金融機関はその争いに巻き込まれないための防衛策として、口座を凍結するものとされています。

預貯金の仮払い制度①

これまでの相続法制のもとでは、口座が凍結された後、金融機関は、原則として相続人全員の同意がある場合に出金または口座解約に応じていました。

そのため、複数の相続人の間で意見の相違があったり、相続人の一人の居場所が分からなかったり、または相続人の一人が判断能力を失って同意をすることができなかったりする場合には、預貯金を現金化して相続人が取得するまでに相当程度の期間が必要となっていました。

払戻しの必要性

しかし、例えば、相続人の一人が当面の生活費や葬儀費用に困窮する状況にある場合など、ある程度の預貯金を速やかに払い戻すことが必要となる場合があります。

預貯金の仮払い制度は、このような場合に対応するために新設された制度です。

仮払いの手続

新しい相続法制のもとでは、相続人は、亡くなった人(被相続人)が預貯金口座を有している金融機関に対して、自分が相続人であることを示して預貯金の仮払いを申請することで、一定の限度額まで仮払いを受けることができます。

預貯金の仮払い制度②

仮払いを受けた分は、その相続人が、遺産分割によって取得したものとみなされます。

その後、残りの預貯金やその他の財産を相続人でどのように分割するかという遺産分割協議が行われるときに、既に仮払いのなされた分が考慮されることになります。

仮払いの限度額

仮払いを受けることのできる限度額は、次の①及び②によって計算した金額です。

          相続開始時の預貯金の額(口座ごと)×1/3×払戻しを受ける人の法定相続分

          ただし、金融機関ごとに上限150万円

例えば、相続人の一人であるXさんが2分の1の法定相続分を有していて、相続財産としてA金融機関のa口座に600万円の預金、B金融機関のb口座に1200万円の預金がそれぞれ存在するとします。

この場合、Xさんは、仮払いの手続をすることによって、次のとおりa口座から100万円、b口座から150万円をそれぞれ上限として、仮払いを受けることができます。

(1)a口座について

  600万円×13×12100万円

(2)b口座について

  1200万円×13×12200万円 

※ただし、金融機関ごとに150万円が上限のため、上限額である150万円。

施行時期

上記の仮払い制度についての改正法は、2019年7月1日に施行されます。

この日以降に被相続人が亡くなった件だけでなく、この日よりも前に被相続人が亡くなっている件についても、施行後は仮払いの手続を行うことができます。

その他の仮払い制度について

なお、例えば被相続人の債務をどうしても早期に支払わなければならないなど、上記の仮払いの上限額では金額的に不足するという場合は、裁判所に保全処分を申し立てることによって仮払いを受けるという手続もあります。

詳しくは弁護士にご相談ください。

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